ハースF1新代表・小松礼雄の覚悟 メンツや権力はどうでもよく、マシンの速さを追求する (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【シュタイナー前代表になろうとは思っていない】

 今回のチーム代表就任に際し、小松がジーン・ハースに明確に伝えて承認を得たのは、自分はエンジニアとしての知見をもとにチーム体制の技術的な強化に専念する、ということだった。

「これはジーンにもはっきりと言ったことですが、僕の専門知識から言えば、マーケティング面やスポンサー獲得といったところに注力しても意味がありません。僕がどんな経験を持っていて、どんなエリアが改善できると考えているか、どこに関しては不慣れで誰かの助けを必要としているか、ということは明確に伝えました」

 不慣れな仕事までひとりでやろうとするのではなく、そこはそれを得意とする人材を起用して権限移譲するつもりだという。

「自分の職責を広げすぎないようにすべきだと考えています。自分の長所を最大限に生かし、自分が把握しているかぎりの弱点と言える部分は、ほかの人からの助けを請います。ジーンもそれに対して支援をするという約束も取りつけています。

 僕のスキルが生かせない場所ではそういった分野に精通した人間が必要で、僕は技術面に集中して、チームを技術的に強化するための組織作りに専念すべきです。なので(ほかのチーム代表とは)責任を負う範囲がかなり違うと言えます」

 シュタイナーとは大きく性格の異なる小松新代表だが、2016年のチーム創設以来、ともに戦ってきたシュタイナーとはプライベートも含めて良好な関係を築いており、仕事の面においてもお互いにリスペクトの念を持つ間柄だ。だからこそ、彼の代わりを務めるのは無理だということも、小松はよくわかっている。

「もちろん、僕はギュンター・シュタイナーになろうとは思っていません。別の人間です。僕らは本当にとてもいい関係を築いていましたし、お互いにその人柄も、肩書きも、仕事内容もリスペクトしていました。だから僕らは、仕事の中でも外でもよく一緒に食事に行きましたし、仕事以外のこともたくさん話しました。

 でも、僕はギュンターのキャラクターまで肩代わりしようとは思っていません。僕と比べれば、彼は性格も、長所も短所もまったく違います。ジーンがギュンターの代わりになる人を求めているのなら、僕ではなくほかの人間を起用したはずです。

 だから、誰かのようになるのではなく、僕は自分のやり方で自分の最大限の力を発揮したいと思っています」

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