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角田裕毅の16位には大きな価値があった。不協和音の空気に耐え、弱さと向き合い、そして克服した

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 レッドブルリンクの緑に柔らかな陽射しが降り注ぎ、メインストレートの上を超低空で幾機もの飛行機が通り過ぎ、空を見上げた人々が歓声を上げる。

 決勝のスターティンググリッドへ向けて、マシンが走り出すまであと20分。レーシングスーツに身を包んでピットガレージに姿を見せた角田裕毅は、グリッドに向かう準備を終えてピットレーンにいたメカニックたち一人ひとりと力強い握手を交わした。

 この時点で、角田は心に決めていたはずだ。決勝は絶対に、最後まで冷静に走りきろうと。

アルファタウリのマシンに苦労した角田裕毅アルファタウリのマシンに苦労した角田裕毅この記事に関連する写真を見る マシンには前日のフリー走行2回目から明らかな異常があった。タイヤがタレてくるとその問題が顕著に出て、フロントもリアもマシンの踏ん張りがまったく利かない状態になる。

 FP2のあとにチームがマシンのあらゆる箇所、あらゆるデータを調査したものの、問題は見つからなかった。しかし、スプリントレースではその症状が続き、チームメイトのピエール・ガスリー車と比べても明らかにグリップレベルが低く、17位まで順位を落として23周のレースを終えた。

「フリー走行(FP2のロングラン)からペースが異次元に遅くて、それがなぜなのかはちょっとわからないです。FP2の時点で問題があるのはわかっていたんですけど、スプリントレースまでにデータ上でその問題を見つけ出すことができなかったんです。これからしっかりとデータを見てみたいなと思います」

 中高速コーナーが連続するバルセロナでも、ダウンフォース不足のAT03はコーナリング中のスライド量が多く、タイヤ表面がオーバーヒートすることでグリップ不足に陥っていた。しかし今回は、明らかにそれとは違う症状だと角田は言った。

「バルセロナの時は、スライドすると言ってもチームメイトと同じくらいのスライド量でしたし、ちゃんと普通の予想どおりのスライドの仕方でした。でも、今回は全然違うので......全体的なグリップレベルが低すぎるのと、マシンバランスも予測できない挙動を示していました」

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