中野信治が角田裕毅のF1初年を分析。初戦で生まれた「いけるかもの油断」、最終戦までの成長 (2ページ目)

  • 川原田 剛●構成 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、村上庄吾●写真 photo by Sakurai Atsuo, Murakami Shogo

【最終戦の好成績に意義】

 でも中盤戦からレッドブルのリザーブドライバーを務めるアレックス・アルボンがサポート役としてつき、彼だけでなく周りからもいろんなアドバイスを受けたはずです。それで角田選手は、自分自身がいろいろ変化しなければいけないと気がついたと思うんです。アルファタウリのマシンの特性に合わせてドライビングスタイルも変えているようにも感じました。おそらく葛藤があったと思いますが、そのなかで頑張ってきたことが、最後の最後に結果という形で現れてきたというふうに見えました。

 最終戦でガスリーを倒して、角田選手が本来の実力を発揮したことにはすごく大きな意味があります。現在のF1では、勝敗の7〜8割はクルマで決まると言っても過言ではありません。2021年のアルファタウリは、ガスリーのドライビングスタイルに合ったクルマに仕上がっていました。ガスリーにマシンが合っているということは、角田選手にとってはスタートラインの時点で差がついていたのです。

 2022年はマシンのレギュレーションが大きく変わります。各チームはすでにマシンの設計が基本的に終わり、これから細かいところを進めていく段階だと思います。アルファタウリはこれまでずっとガスリーの意見を聞いてマシンを作り込んでいた部分があったと思いますが、シーズン終盤に角田選手が結果を出し続けたことで、角田選手にもマシンを合わせていかなければならないという空気がチーム内に生まれているはずです。

 両者のスタートラインが近ければ、2022年は角田選手とガスリーはすごく接近したところでおもしろい戦いをしてくれると思います。

 チームメイト同士が競い合うことはチームにとっても大きなメリットになります。現在のF1では、チームのドライバーひとりが頑張ってもなかなか結果が出せません。特にアルファタウリのような中堅チームは、両方のドライバーでチームを盛り上げていかないと、マシンの競争力が上がっていかないのです。

 ふたりのドライバーがお互いを高め合いながら競えば、チームには、いいクルマを作らなければならないというプレッシャーがかかり、相乗効果をもたらします。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る