ホンダF1第4期、7年間の歩み。復帰戦を目指す3カ月前、事態はあまりに深刻だった (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 そして彼らがそんな姿勢で作り上げたのが、"サイズゼロ"コンセプトの2015年型マシンMP4-30だった。

「もちろん、出力やドライバビリティでトップを狙うのを目標としています。だけどそれだけではなくて、今のパワーユニットにはエアロダイナミクスとの協調という、もうひとつの要素が強く求められているわけです。MP4-30は"サイズゼロ・カー"というコンセプトの下にデザインしてきましたから、それを実現するためにかなり工夫をしています。

 妥協点を探す工夫ではなく、お互いに相当高いレベルで譲り合わないことをずっとやってきました。せめぎ合って、せめぎ合って、お互いに『そんなにやりたいんだったら、こっちもやってやるよ!』というくらい技術的には相当やり合いました。その結果がすばらしい形になったと思うし、グリッド上で最もコンパクトなクルマになったんじゃないかと思います」(新井総責任者)

 開幕前テストは決して順調と言えなかったが、それなりの連続周回もこなした。エースのフェルナンド・アロンソがバルセロナテストのクラッシュで開幕戦に出場できなくなってしまったとはいえ、11月末のアブダビでは開幕に間に合わないのではと思われたパワーユニットを3月のメルボルンに間に合わせ、ハイブリッドシステムも稼働させた。

 しかし、ギリギリで間に合わせたパワーユニットは、3月のメルボルンの暑さに合ったマッピングが整えられてなかった。絶対に安全と言えるマージンを残して施したセットアップで走り、予選はトップから3秒落ち。

 アロンソの代役で出場したケビン・マグヌッセンは、グリッドに向かう途中でMGU-K(※)が破損してスタートをきることができなかった。長時間にわたるアイドリング時の振動でモーターのシャフトベアリングが壊れるという初歩的なトラブルだったが、ジェンソン・バトンは2周遅れながら11位でマシンをゴールへと持ち帰った。

※MGU-K=Motor Generator Unit-Kineticの略。運動エネルギーを回生する装置。

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