2021.03.27

中野信治が角田裕毅に感じる「天性の速さ」。勝つために必要なものは?

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、村上庄吾●撮影 photo by Sakurai Atsuo, Murakami Shogo

中野信治インタビュー中編
角田裕毅への期待

史上最多の全23戦が予定されているF1世界選手権の2021年シーズンが今週末、中東のバーレーンGPを皮切りにスタート。そこでスポルティーバでは、DAZN(ダゾーン)でF1解説を務める元F1ドライバーの中野信治氏にインタビューし、21年シーズンの見どころを聞いた。中編は7年ぶりに誕生した大注目の日本人ドライバー角田裕毅への評価について語ってもらった。

いよいよF1デビューする角田裕毅
 今シーズン、角田選手(以下、選手略)がやるべきことは明確です。チームメイトのピエール・ガスリーに勝って、表彰台に立ち、優勝するという目標をできるだけ早い時期に達成することです。シーズンが始まると同時に、角田はもうホンダが撤退した後の2022年を見据えた戦いをしなければならないと思っています。

 角田は海外でも評価が高まっていますが、彼の能力の高さを初めて実感したのは19年でした。当時、彼はヨーロッパでFIA-F3選手権に参戦していて、僕はシーズン序盤にスペインで開催されたレースを見に行きました。そこで彼の走りを実際に見て、担当エンジニアと話をして、走行データを見せてもらい、すごくうまいと感心しました。

 正直、彼の所属していたチームは強くなかったし、クルマも決して速くなかった。でも角田を速いクルマに乗せれば勝つだろうな、と思わせるドライビングをしていました。そして実際にシーズン終盤にはF3で初勝利を挙げてF2にステップアップするチャンスをつかみ、F2でもデビューイヤーに3勝を挙げてランキング3位になり、F1のシートを獲得しました。

角田裕毅への期待を語った中野信治氏 彼のすごさは、クルマの限界を見極めるのがとにかく早いこと。それは、ブレーキングやアクセルの操作、ハンドルの切り方などのデータで見ると、クルマの限界を感じながら走っているんだなと、いろんな角度からわかりました。しかも角田は、マシンの限界を引き出すドライビングを誰かから教わったわけでなく、本能的にできています。よく天性の速さを持っていると言いますが、角田はまさにそういうタイプのドライバーなのです。

 僕は鈴鹿サーキットレーシングスクールで若いドライバーたちを育成していますが、こういう感覚は教えてもなかなか身につきません。ある程度は成長していきますが、いきなりガーンとは伸びていかないんです。やっぱりうまいドライバーはマシンの感じ方がちょっと違うんです。