コロナ禍のF1現場で名フォトグラファーは見た。昨季の印象的な出来事 (2ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 五十嵐和博●写真(プロフィール) photo by Kazuhiro Igarashi

2020年シーズン、自身7度目となるチャンピオンを獲得したルイス・ハミルトン。写真は第15戦バーレーンGPにて(熱田護=撮影)2020年シーズン、自身7度目となるチャンピオンを獲得したルイス・ハミルトン。写真は第15戦バーレーンGPにて(熱田護=撮影)熱田 僕は無観客でも、どんな形であってもF1を撮影したい、記録したいと思っていました。シーズン前半はテレビで見ながら、F1を主催する国際自動車連盟(FIA)の担当者にいつ現場に行けるのかと連絡をしていたのですが、返事が来なかったり、「ちょっと待ってください」という対応でした。それでも10月の第10戦アイフェルGPの前に年間パスを所有する全フォトグラファーに対して、今後のレースは取材制限を緩めてメディアの人数を増やすという連絡が来ました。それでイモラでの第13戦の取材を申請し、飛行機やホテルの手配をしたのですが、出発のぎりぎりまでOKの連絡が来なくて、本当にヒヤヒヤしましたね。

 いざ取材の許可が出ても、イタリアに入国するには日本と同様に2週間の自主隔離が必要で、それを免除するためにイタリアの保健相に特別の許可を取らなければならない。書類を準備したり、日本でPCR検査を受けたり、やることが山ほどありました。イタリアから日本に帰る時も飛行機の便が突然キャンセルされたり......。そういう苦労話をすると1時間ぐらいかかります(笑)。サーキットに入るまでは本当に大変でしたが、いったん現地へ行くと、お客さんがいないのでまったく混まない。そういう意味では、取材は楽でしたね(笑)。

●2020年シーズンはハミルトンが17戦中11勝で圧倒的な強さを発揮して、シューマッハに並ぶ通算7度目のチャンピオンに輝きました。今年もタイトル争いの本命だと思いますが、ハミルトンの活躍はどう見ましたか?

桜井 ハミルトンは速さ、強さ、運のすべてを持ち合わせています。F1にステップアップしてくるドライバーは、速さは皆ほとんど変わらないと思うんです。実際、ウイリアムズでいつも後方を走っているジョージ・ラッセルが、新型コロナに感染して欠場したハミルトンの代役として第16戦サクヒールGPに出場して、いきなり優勝争いをするんですから。

 でも最後のツキをつかめるかどうか。そこがチャンピオンの器なのかどうかの大きな分かれ目になると思います。ハミルトンは第4戦のイギリスGPで最終ラップにタイヤがバーストしましたが、それでも勝ってしまう。速さだけでなく、タイトルを獲得するだけの強運も持っているんですよね。

熱田 ハミルトンが強運だというのは同意しますが、代役のラッセルが乗っても速いということを証明してしまった。ハミルトンじゃなくても勝てるって。そういう意味では"持っていない"かな(笑)。

桜井 ちょっとスキがあったかもしれないですね(笑)。

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