中野信治が語る日本人F1ドライバー育成。絶対に必要な資質とは? (4ページ目)

  • 川原田剛●取材・構成 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「僕たちの仕事は、ダイヤの原石を増やしていくことです。可能性のある子はたくさんいるわけですから、その子たちに知識を与えて、やるべきことを当たり前にできるように習慣化させていく。そのためにスクールのカリキュラムや生徒の評価方法を変えています。

 やるべきことをきちんとできなければ、翌年のスカラシップを受けらなくなる可能性もあります。F1は本当に限られた、選ばれた人間しか行けない場所ですので、それぐらい厳しくやっています。 

 たとえばサーキットでのスクールの授業が終わってもまだスクールは続いていて、部屋にいったん戻ってお風呂に入って、ご飯を食べたら、そのあとはミーティングの時間にしています。

 そこでは、基本的に生徒たちにディスカッションさせ、相手の意見を聞きながら、自分の意見をしっかり主張できるようにするトレーニングの場にしています。まだ子どもなので、最初は人前で話すのを恥ずかしがったりします。でも、自分の意見をきちんと言えなければ世界で仕事をすることができないということを、生徒ひとりひとりに徹底して教え込んでいます。

 時間はかかりますが、そういう細かいことを積み重ね、実践していかないと本当の意味での変化は起きませんし、人も育っていきません。

 でも、今の子どもたちはすごいですよ。教えたことを貪欲に吸収し、行動することができます。先日、スクールを訪れたホンダのモータースポーツ部の方が、子どもたちがきちんと挨拶して、自分のことをアピールできるというので驚いていましたから。これからが楽しみです」

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