「ホンダの総力の結集」をF1責任者が語る。前半戦2勝は予想以上 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 一方でホンダは、開幕仕様のスペック1にはICE(内燃機関エンジン)に信頼性懸念が見つかり、第3戦・中国GPでダニール・クビアト車にトラブルが発生したのを受けて、第4戦・アゼルバイジャンGPにすぐさまスペック2を投入。ただし、これはトラブル対策を施しただけで、性能は向上していなかった。それでも耐久性が向上したことで、決勝でよりパワフルなモードをより長く使用できるようになったことも確かだった。

 そして第8戦・フランスGPには、ホンダジェットの技術を投入したターボチャージャーを含むスペック3を投入。いよいよ性能向上を果たしてきた。

 ラージプロジェクトリーダーとしてパワーユニット開発を統括するHRD Sakuraの浅木泰昭執行役員は、スペック3についてこう説明する。

「昨年型ではMGU-H(※)の軸受け部分を直すのにホンダジェットの技術で助けてもらいましたが、今回は空力設計部分に協力してもらってターボの効率を改善しました。IHIさんと一緒にやっているターボのタービンやコンプレッサー、つまり羽根だったりカタツムリの部分だったり、空気が流れる部分をベースに、航空機エンジンのノウハウで、より少ないエネルギーで高い圧力・差圧を出したり空気流量を出したりといった改良を、さらに加えた形ですね」

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 ターボ効率の改良というのは、一見するとピークパワーにさほど影響がないように思われがちだ。だが、限られた燃料流量と回転数、回生エネルギー容量のもとで効率勝負となっている今のパワーユニット開発においては、重要な意味を持つ。

 そして何より、これによって得られたのは、気象条件に左右されることのない安定した性能だ。

「パワーを上げればICEからの排圧が下がってターボが回らなくなるのを、ターボ効率を上げることで(排圧低下の影響を気にせず)パワーを上げるという使い方と、ターボが回る分(そこに連結した)MGU-Hの回生量を上げる使い方と、その両方をやる中間的な使い方があります。

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