最高に盛り上がった鈴鹿8耐。だが、その結末の後味は悪かった (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 レイは暗闇をものともせずに、ファステストラップを更新しながら高橋とのタイム差を詰めてゆく。ロウズもバックマーカー(周回遅れ)を次々と処理しながら、前に見えない2台を追う。そこにコースの一部で雨もぱらつき始め、状況はさらに緊迫感を増しはじめた。

 201周目、ついにレイが連続セッションで疲労の見える高橋をオーバーテイク。その後も一気に差を広げはじめた。数周後はロウズも高橋を捉え、2番手に浮上した。

 レイのペースはいっこうに衰える気配がなく、レースも残り10分を切ってカワサキの1993年以来26年ぶりの8耐優勝がどんどん現実味を増してきた。そのとき、1台のマシンがコース上で白煙を上げた。

 鈴鹿8耐は、世界耐久選手権(EWC)のシーズン最終戦に組み込まれており、このレースはEWCの2018/2019チャンピオンを争う重要な一戦だった。スズキ・エンデュランス・レーシングチーム(SERT)は9番手を走行しており、この順位でチェッカーを受けるとライバルチームに1ポイント差で逆転チャンピオンを奪取できる位置につけていた。

 だが、彼らが211周目に差しかかった1コーナーで、突然エンジンがブロー。暗闇のなかでエキゾーストから白煙を撒きあげながらスローダウンし、2コーナーを経てS字コーナーのコースサイドにマシンを停めた。レース開始から7時間55分、EWCにおける彼らの逆転優勝はこれでついえた。

 この時、トップを走行するカワサキを先頭に、ヤマハ、ホンダのマシンは216周目に差しかかっていた。さらに2周を走り、午後7時30分まで残り2分を切って、レイが218周目の周回に入っていった。

 このラップを終えてチェッカーフラッグを受ければ、カワサキが悲願の優勝を達成する。だが、そのファイナルラップで、レイがS字コーナーでいきなり転倒。ヘッドライトのみが路面を照らす暗闇のなか、数分前にSERTの撒いたオイルに乗ってしまい、タイヤを滑らせてしまったのだ。

 午後7時30分まで残り1分30秒となったところで、赤旗が提示されてレースは中断。ラップタイムモニター上では、カワサキが転倒したため、ヤマハ・ファクトリー・レーシングがトップに繰り上がり、レッドブル・ホンダは2番手として表示されていた。

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