エアレース室屋義秀に不可解判定も、次戦・千葉での王座奪還へ前を向く (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Andreas Langreiter / Red Bull Content Pool

 心配なのは、この悪い流れが次戦にまでつながらないか、ということである。

 室屋がこれまで、いくつものアクシデントに見舞われてきたことは、すでに記した。そして、その時々で悪い流れに飲み込まれ、それを乗り越えてきた。しかし、過去のシーズンの経験から言えるのは、一度悪い流れに飲み込まれると、そこから抜け出すのは簡単ではない、ということだ。

 昨季は、第3戦でのオーバーGによるラウンド・オブ・14敗退をきっかけに、第6戦までファイナル4へ進むことができなかった。年間総合優勝を果たした2017年シーズンにしても、第4戦でわずかに生じたフライトの感覚の乱れをきっかけに、第5戦は0ポイント、第6戦はわずか5ポイントというレースが続いた。

 もしも、この悪い流れがそのまま次のレースまで続けば、室屋の2年ぶりの王座奪還はない。

 もちろん、室屋は2009年のデビュー以来、シーズンを重ねるごとに成長を続けてきた。とりわけメンタル面の強化は著しい。これまでの、悪い流れに飲み込まれ続けてきた室屋と、今の室屋は違う。その意味で言えば、次戦、すなわち、チャンピオンシップをかけた今季最終戦は、室屋の真価が問われるレースになるだろう。

 第3戦で12位となり、わずか2ポイントを加えるにとどまった室屋(55ポイント)は、チャンピオンシップポイントランキングでも首位から3位に後退。代わって首位に立ったソンカ(65ポイント)とは10ポイント差、2位のホール(61ポイント)とは6ポイントの差をつけられている。全4戦で争われる今季のチャンピオンシップは、残すところ9月に千葉で行なわれる最終戦を残すのみであり、室屋に自力で年間総合優勝を手にする可能性はない。

 それでも、室屋が「インディのときのような感じかな」と話すように、状況は2017年シーズンの最終戦(アメリカ・インディアナポリス)を前にした状況とよく似ている。室屋にとっては、奇跡の逆転優勝を果たしたときのいいイメージで決戦に臨めるのは、好材料だ。室屋が続ける。

「(ラウンド・オブ・14敗退にもかかわらず、)まだ十分に優勝圏内に入っているから、とりあえず、ほっとしている感じもなくはない。次の千葉では、いろいろ作戦を組んでいくことにはなると思うが、ともかく全力で当たっていくしかないし、優勝狙いしかない。予選からポイント獲得を狙っていくことになると思う」

 次の千葉でのレースは、今季最終戦であると同時に、今季限りで終了が決まったレッドブル・エアレースのファイナルレースでもある。

 室屋が8シーズンで積み上げてきた成長の証を示すには、これ以上ない絶好の舞台である。

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