レッドブル・ホンダに厳しい現実。必要なのは「魔法のパスワード」だ

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「ここまでの苦戦は、予想していませんでした」

 第2戦・バーレーンGPの決勝後、ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターは語った。

 2週間前のメルボルンで3位表彰台を獲得したレッドブル・ホンダだったが、バーレーンではフェラーリとメルセデスAMGに1周1秒近い大きな差をつけられ、予選ではハースにわずか0.005秒差というところにまで迫られた。

今季初のパーマネントサーキットで戦ったレッドブル・ホンダの結果は......今季初のパーマネントサーキットで戦ったレッドブル・ホンダの結果は...... ただ、田辺テクニカルディレクターが言う「予想していない」とは、予想外の苦戦というよりも「事前予想はしない」という意味合いのほうが強い。「予想がつかない」ということでもあり、「予想しても無意味だ」ということでもある。

 しかし、それを差し引いても、バーレーンでのパフォーマンスは思いのほか厳しかった。

「いいとも思っていないし、悪いとも思っていなかったんです。前回のメルボルンの結果もありましたけど、今回こういうサーキットに来たらどうなるかはフタを開けてみるまでわかりませんでしたし、それが実際にフタを開けてみたら、けっこう苦しかったというところですね」

 開幕前テストは、あくまでテスト。とくにレッドブルはクラッシュの影響もあって、ライバルほど突き詰めた走り込みができなかった。開幕戦はバンピーでダスティな半公道サーキットゆえに、マシン本来の実力が見えるとは言いがたい。

 だからこそ、初めてのパーマネントサーキットでの実戦となるバーレーンGPでは、よりクリアな勢力図が見えてくるはずだった。

 それがこの、トップから0.886秒差、逆に後方の10位まで0.291秒差でしかないという現実――。つまり、優勝争いの3強どころか中団グループに飲み込まれそうになっていたのだから、レッドブル・ホンダ陣営が受けた衝撃は、我々が思うよりもずっと大きかったはずだ。

 決勝では中団トップを走っていたルノーとの間に30秒ほどの差が開いたとはいえ、トップからは45秒も遅れていた。マシンは週末を通してナーバスで、とくにリアのグリップ不足がドライバーたちを苦しめた。

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