山本尚貴は「F1に乗りたい。でも......」。国内二冠王者の本音と現実 (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 それは、ここまで築いてきた日本でのポジションや、家族の問題もあるからです。とくに、家族の存在は何物にも代えられない。すごく悩ましい部分ではありますが......2019年はスーパーフォーミュラとスーパーGTで再びチャンピオンを目指すことが大事だと思っています。

 ただ、『F1に乗りたい』という想いの灯(ともしび)が消えることはない。なので、努力は最大限したいと思っています」

 気持ちを切り替えて臨む今季、スーパーGTでは昨年同様にジェンソン・バトンと組んでRAYBRIG NSX-GTをドライブし、スーパーフォーミュラではさらなる高みを目指してDOCOMO TEAM DANDELION RACINGへの移籍を決断した。

 また、山本にとって2019シーズンは、国内最高峰レースにデビューして10年目となる節目の年。今年7月には31歳となり、気つけば自分を慕う後輩たちも多くなってきた。

「僕が21歳でデビューした当時は、道上龍選手や小暮卓史選手が第一線で活躍している時でした。それから10年が経って......今の牧野任祐選手(21歳)や福住仁嶺選手(22歳)が10年前の自分だと考えると、僕が(10年前の)小暮選手のような(若い世代を引っ張っていく)ポジションに来たのかなと。そう思うと......不思議な感覚ですね。

 当時、小暮選手は憧れの人でしたし、誰もが認めるエースドライバーでした。僕もデビュー当時はいろんなことを教わりました。そんな小暮選手が(今シーズンから)GT500クラスからいなくなってしまったのは、すごく残念な気持ちはあります。

 目標とする選手を無心で追いかけてきた10年でしたけど、これからは若手ドライバーに見られる存在になっていく。10年という節目に、新しいステージを迎える感じです」

 ダブルチャンピオンという快挙をひとつの区切りとして、2019年からは「第2ステージの始まり」なのだと語った。

 14年ぶりの国内二冠王者に輝き、F1挑戦の道も垣間見えた。注目度が一層高まった2019シーズンに、山本尚貴は真の強さを証明するため、王座防衛を目指す。

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