苦労が報われたホンダF1。開幕戦3位表彰台も喜んでいる場合じゃない (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 しかし当然、手放しでは喜べないという気持ちもあります。予選・決勝を通してメルセデスAMGの強さと、彼らとの差はハッキリと見えていますから、大喜びしている場合ではない」

 たしかにコース上でフェラーリを追い抜いたあのシーンは、ホンダの躍進を顕著に表わす場面であり、あまりに感動的だった。

 しかし、そこに至った背景を忘れてはいけない。

 3位を走行するベッテルが14周目にピットインしてルイス・ハミルトンとの逆転を狙うも、ハミルトンはこれに反応してピットに飛び込みポジションを守った。

 性能低下の少ない今年のタイヤでは、ピットストップは長いレースの中でたった1度。そのライバルの逆転のチャンスをしっかりと潰したのが、メルセデスAMGだった。

 ただ、レッドブルはここで動かなかった。フェルスタッペンにはレース序盤からタイヤをセーブさせて、25周目まで引っ張らせたうえでピットインしてタイヤを交換。これによって第2スティントは、先にピットインしたベッテルおよびハミルトンより常に10周新しいタイヤで走るという"アドバンテージ"を作り出した。

 レッドブルが最初から狙っていたのは、ここだったのだ。この10周の差を生かして、レース後半に勝負を仕掛けようとしたわけだ。

 レッドブルがこの戦略を採ることができたのは、タイヤマネジメントに自信があったのもさることながら、ピットストップで逆転しなくともコース上でフェラーリを追い抜くことができる、という自信があったからこそだ。

 そして、その自信を持てたのは、ホンダがこれまでのレッドブルになかったパワーと最高速の伸びを与えてくれたからにほかならない。ホンダ関係者も、「明確な差はまだわからないが、パワーはかなり追いついているし、少なくとも戦えるポジションには来た」と自信を見せた。

 目の前のトラックポジションに惑わされることなく、2台体制でどちらの戦略にも振れるライバルチームに対し、1台で戦わなければならないからこそ冷静に、第2スティントで有利な状況を作り出すことに徹した。

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