F1ホンダは事実上「第5期」に。猛獣と呼ばれるトップが再建に自信 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

 もうひとつ、ホンダらしさを取り戻すカギになるのは、ホンダらしい人間がちゃんと実力を発揮できる環境を整えることだ。

 ファンの間からは、第4期F1活動の体たらくに「ホンダは本当に勝つ気があるのか?」という声も聞こえてくる。しかし、浅木や山本がそうであったように、枠にはまらないような人間が力を発揮してこそ、ブレイクスルーは生まれる。今のホンダがホンダらしく見えないのは、そういうところに原因があると山本は言う。

「僕や浅木なんて猛獣だったけど、そんな猛獣を使うコツがあるんですよ。今のホンダにはそういう猛獣使いが減ってしまった」

 彼ら自身が猛獣だからこそ、猛獣のようなスタッフをうまく生かすことができる。浅木は言う。

「私のマネージメントで普通と違うのは、社内のはぐれ者になっているような人間、扱いにくいと思われているような人間が力を発揮できる環境を作るところ。そういう人って、頭はいいけどその気にならなきゃ全然働かなかったりする。だけどベクトルが合うと、倍働くんですよね。私もそうだし、そういう人の気持ちはよくわかる。彼らが倍働くようになれば、HRD Sakuraは雰囲気も含めてよくなると思います」

 やる気がないように見えるというのも、「不可能命題のようなものを与えられ、世間からの大きな期待とプレッシャーにさらされて、それが焦りになって空回りしている部分があるように見受けられる」と浅木は言う。その空回りを落ち着かせるのも、自分の役目だという。

 ただ、巨大な船は舵を切ってもすぐには反応せず、進行方向が変わるまでには時間を要するものだ。組織全体を変革し、その効果が結果となって表れてくるまでには、半年はかかるだろうと浅木は見ている。

「今はそれをやっている最中だし、そんなにすぐはできない。やはりあと半年くらいは時間がほしい。でも、我々に残されている時間はそんなにないとも認識しています」

 開幕前テストが始まった2018年型パワーユニットの技術詳細については、まだ何も明かしてはくれない。しかし、まず重点を置いたのは、信頼性であることは言葉の端々から感じられた。

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