エアレース王者・室屋義秀の今季は「楽にチャンピオンを獲る」が目標 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 そんな状況を考えれば、室屋の反応は少々つれないようにも思える。だが、これこそが室屋のアスリートとしてのスタンスなのだ。自分の手ではどうすることもできない外的要因は気にせず、あくまでも自分ができることを、やるべきことをやるだけ。言い換えれば、それを貫いてきたからこそ、世界の頂点に立てたのである。室屋が語る。

「僅差の勝負なので、去年は勝てたけど、今年はどうなるかわからない。去年のトロフィーはもう脇に置いておいて、今年は今年でまたイチからっていう感じだと思う。チームは熟成されてきている手ごたえはあるが、それで優勝できるかっていうと、そんなに甘くはないから。だから、1本ずつのフライトを大切にやっていくしかない。今年もギリギリの戦いになると思う」

 世界チャンピオンでありながら、控えめな発言を続ける室屋だが、しかし、だからといって自信がないわけではない。だからこそ、「今年はもうちょっと楽に勝ちたい(年間総合優勝したい)」と、単に連覇を目標に掲げるだけでなく、"勝ち方"にまで言及する。

 昨季の室屋は、全8戦のうち半分の4戦を制した。本来なら、ぶっちぎりでポイントランキングのトップになっていいはずの驚異的な勝率である。
 
 ところが実際は、年間2位のマルティン・ソンカとの差はわずか4ポイントしかなかった。「普通なら4勝もすればもっと楽勝のはずなのに、最後までもつれてしまった」と室屋。最終戦のソンカの結果次第では、室屋は4勝してもなお、年間総合優勝を逃していた可能性もあったほどだ。

 室屋が「見ている人にはドラマチックな展開でおもしろかったと思うけど」と苦笑しながら、「コンスタントに飛ぶこと」を連覇のカギに挙げる理由はそこにある。

「2勝くらいして優勝争いに絡み続け、3勝目を挙げたらそこで優勝が決まるような展開になるのが、戦い方としては理想でしょう」

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