エアレース室屋義秀、最強ライバルを叩くチャンスも返り討ちで無念! (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 自分にできることはベストで飛ぶことだけ――。人事を尽くして天命を待つしかない室屋は、繰り返し、そうつぶやく。

「マルティンとは10ポイント差、(2位の)ピートでも6ポイント差。上位のパイロットがコケてくれなければ差を詰めるのが難しくなってしまった。でも、彼らだって常に完璧なわけではないし、何が起こるか分からないから。あとは自分がベストで飛ぶしかない。明日のポイントを考えてもしょうがない。今をベストで飛ぶしかないから」

 勝負は下駄をはくまで分からない。あきらめた時点で勝負は終わり。とはいえ、今季残されたレースはわずかに2戦。起こりうる結末が徐々に絞られてくるなか、安易に逆転優勝のシナリオを思い描くことは、現実から目を背ける行為に他ならない。

「どっちかというと、追いかける展開のほうが燃えるかな」

 自分の気持ちを奮い立たせるようにそう語る室屋。だが、これに続いた言葉は、当事者である彼自身が現状の厳しさを痛いほど理解していることをはっきりとうかがわせた。

 笑みを浮かべ、冗談めかしてはいたが、それが偽らざる本音だということだろう。

「10ポイントか......、これが5ポイント差くらいだったらよかったのに」

 優勝争いへの生き残りをかけた大一番。敗者に待っていたのは、無情の現実だった。

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