「真のライダー」だったニッキー・ヘイデン。ホンダ元監督が語る人柄 (5ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ニッキー・ヘイデンがホンダの選手として走り続けた期間、山野とは何度も出会っては別れ、また出会う、ということを繰り返した。35歳というあまりに早い年齢で一生を終えてしまったこのライダーは、山野一彦という技術者にとっていったいどんな存在だったのだろう。

 そう訊ねると、山野はしばらく考える様子で黙り込んだ。そしてゆっくりと口を開き、「真のライダー、ですね」と述べた。

「世界中に数多くのライダーがいるなかで、彼ほど真摯にレースに向きあう姿勢は、ほぼ見たことがありません。誤解を恐れずに言えば、彼はけっして器用なタイプの選手じゃありません。ずばぬけた天才ライダーでもないかもしれません。でも、天才ではないがゆえに、彼は努力の大切さを誰よりもよくわかっている。そして、それが報われることを身をもって証明した。何事においてもあれほど努力をできる真のライダーは、ニッキー・ヘイデンをおいて他にはいないと思います。

 それはお父さんの教えだったのかもしれないし、お母さんの教えだったかもしれない。お兄さんや弟、姉妹のヘイデンファミリーの家族の和が、ニッキーを作っていったのだと思います。だから、彼は誰かのために努力をしなきゃいけないといつも思っているんですよ。自分自身のためではなくて。だからこそ、あれだけの努力ができるんだと思います」

 現在、東京・青山の本田技研工業本社1階ウェルカムプラザでは、ニッキー・ヘイデンの2006年チャンピオン獲得マシンRC211Vや彼のレザースーツ等が飾られ、記帳台も設けられている。この追悼展示は6月23日まで続く予定だという。

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