不具合に苦しむ小林可夢偉の嘆き。「新車を買ってくださいよ......」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・写真 text & photo by Yoneya Mineoki

「可夢偉さん、がんばって!」

 土曜日に行なわれたレース1のスターティンググリッドで、チーム・ルマンのレーシングスーツを着た子どもに声をかけられ、可夢偉は苦笑いしながら言った。

「明日がんばるわ!」

 それもそのはず、可夢偉のマシンが駐まっているのは、最後尾グリッド。オーバーテイクが極めて困難な岡山国際サーキットで、しかも、わずか28周のレースでは、上位入賞は絶望的な状況だった。

 熊本地震の影響で中止となったオートポリス戦(大分県)の代替として行なわれたこの岡山戦は、土曜と日曜にそれぞれ予選・決勝を行なう特殊な2レース制となった。その土曜の予選で、可夢偉はスピンして最下位に終わる。

 マシンのセットアップとフィーリングは少しずつよくなっているのに、違和感を拭いきれないでいた。

「攻めてなくても、あんなふうによくわからへんことが起きるから。そんなにがんばって攻めてるつもりもないのにね......。運転してて、初心者みたいやもん。ちょっと恥ずかしいもん(苦笑)」

 マシンとタイヤが持つグリップの限界を探りながら、可能な限りそこに近づけていく。98%なのか、99%なのか、その違いが大きな順位の差になって表れる。しかし、0.1%でも限界を超えてしまえば、たちまちコントロールを失って、マシンはどこかへ飛んでいってしまう。限界に近づけば近づくほど、リスクは大きくなる。

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