不具合に苦しむ小林可夢偉の嘆き。「新車を買ってくださいよ......」

  • 米家峰起●取材・文・写真 text & photo by Yoneya Mineoki

密着・小林可夢偉(3)

 コクピットに乗り込もうとする小林可夢偉の左の手の甲には、絆創膏が痛々しく貼られていた。そのふちには、うっすらと血もにじんでいた。

第5戦・岡山でも小林可夢偉の表情は険しかった第5戦・岡山でも小林可夢偉の表情は険しかった 9月11日、岡山で行なわれたスーパーフォーミュラ第5戦。日曜の朝に行なわれた予選で、可夢偉のマシンはまっすぐグラベル(砂利道などの非舗装路面)を突っ切ってタイヤバリアに激突した。その衝撃で左手をぶつけ、負傷したのだ。ランオフエリアの狭い岡山国際サーキットとはいえ、コースを飛び出してほとんど減速しないままぶつかるというのは異様で、明らかにドライバーのミスではなかった。

「最初にブレーキを踏んだらロックしたんで、一度離してもう一度踏み直したら左側が効かなくて、まっすぐ行ってしまったんです。まだ(アタック前の)ウォームアップラップやったし、普段より20mも手前で踏んでるんですよ。それでも止まらない。クルマをチェックしてみても、原因はわかんないんです......」

 前戦のツインリンクもてぎの決勝でも片効きの状態になっていたというが、走行後にメカニックがチェックをしても、不具合は見つからなかった。

 それでも、可夢偉は泣き言を言わず、マシンやチームを非難することもせず、コクピットへと乗り込んでいった。

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