【エアレース】室屋義秀が「敗れても強い」ファステスト・ルーザーに (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 ただし、そうしたケースでも、本当に実力があるパイロットは確実に勝ち上がってくる。当該対決で敗れたとしても、ファステスト・ルーザーで拾われるからだ。ファステスト・ルーザーでラウンド・オブ・14を勝ち上がることは、パイロットにとっては強さを証明する、ひとつの勲章だと表現してもあながち大袈裟ではない。

 そのためには、大きな浮き沈みなく、安定してタイムを出し続ける必要がある。昨季年間チャンピオンにして、昨季限りで引退した"絶対王者"ポール・ボノムがまさにそうだったように、常に落ち着いたフライトを続けることこそが、年間総合で優勝、あるいは上位に食い込む条件なのである。

 今回のレースで、室屋は自身初となるファステスト・ルーザーでのラウンド・オブ・8進出を果たした。今の室屋は、一か八かの博打に挑むのではなく、何割かの余裕を残したうえで確実に計算できるフライトを続けている。「余裕のある戦い方をしないと、年間では勝てない」と考えているからだ。

 ラウンド・オブ・8ではインコレクトレベル(ゲートを水平に通過しなかった)のペナルティを取られ、カービー・チャンブリスに敗れはした。だが、レース全体を通しての安定感という点では、表彰台に立った3人(1位マティアス・ドルダラー、2位ハンネス・アルヒ、3位マット・ホール)に見劣ることはなかった。室屋は語る。

「久しぶりにペナルティを取られてしまい、年間で1位になるためには、ああいうミスは消さなければいけないが、無理をせず、フライト全体を完全にコントロール下に置いたうえで飛ぶことはできていると思う」

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