ホンダのF1総責任者・新井康久氏に直撃。「いつ勝てますか?」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ディプロイメント不足の問題を解決するためには、MGU-Hを中心とした大がかりな改良が必要で、開発と確認に膨大な時間を要する。それゆえにその改良は断念し、2015年後半はICE(内燃機関エンジン)と排気系の改良でエンジン本体の出力向上に努めるしかなかったのだ。

 このように、いくつものピースが欠けた状態では、当初思い描いていたようなジグソーパズルの絵は描けない。それは、至極当然のことだった。

「つまり、最初はERSのピースが全然ダメだったし、エンジン本体のパワーというピースもまだ欠けていた。信頼性というピースはずっと欠けていたし、それからディプロイメントというすごく大きなピースも、欠けているというか、持っていたピースが描いていた絵に対して形の全然違うものだった。ピースの形が違うから(描いた絵に)はめようがない......という状況だったんです」

 加えて車体側も、走り込み不足からくる熟成の遅れは明らかで、細かな空力パーツの改良やセットアップ作業にシーズンの最後まで追われることとなった。

 マクラーレン・ホンダが再始動にあたって掲げた『サイズゼロ』コンセプトの美点は、十分に生かせたどころか、ほとんど形になっていないと言っても過言ではなかった。

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