ホンダのF1総責任者・新井康久氏に直撃。「いつ勝てますか?」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「開幕前のテストをやっている時点で、毎日険しい顔をしていましたよね?(苦笑)」

 新井総責任者がそう語るように、足りないピースは開幕前から予想以上に多く、手に入れるのも困難なものだった。その足りないピースが、彼らの2015年の「敗因」になった。

「シーズン序盤戦は信頼性と熱の問題が出て、ERS(エネルギー回生システム)のシステム自体をかなり制限しなければなりませんでした。外観上はまったく変わっていないけど、見えないところではすごくいろんなことをして、それをなんとか収めてようやく落ち着いたのがスペインGPでした」

 信頼性の問題が解決すると、今度はライバルとの性能差がハッキリと見えてきた。MGU-H(※)の発電量が乏しく、回生できるエネルギーの量がライバルメーカーに較べて少なかったのだ。シーズン中盤以降、何度も耳にした、「ディプロイメント不足」の問題だ。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heat/排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

「もちろん、パワー自体も負けていたわけですが、中盤戦以降はディプロイメント不足の問題のほうが大きかった。シーズン前半でそれに気づいた当時は、まだ技術的にも、『これはどうやって直すんだろう?』という段階でした。『もしかしたら、コンセプトが間違っているかもしれない』とさえ考えました。それから(ホンダの四輪モータースポーツ開発拠点)HRD Sakuraでいろいろと研究をして、改良策の感触は掴めましたが、そのころには、『今から開発したのではシーズンが終わってしまう』という段階で、ディプロイメント不足を克服したくても克服できない状況のまま、ずっと戦ってこなければならなかったんです」

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