ホンダが現実を思い知らされた今季F1の「ターニングポイント」 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ICEの改良に3トークンを使った『スペック3』では、ICEの性能としてはフェラーリに肉薄することを期待していた。たしかにICEの性能は向上したものの、夏休み明けに行なわれた全開率の高いスパ・フランコルシャン(第11戦)やモンツァ(第12戦)、鈴鹿(第14戦)、ソチ(第15戦)でのレースでは、ディプロイメント不足のハンディが如実に表れ、ライバルとの差が縮まるどころか開いたように見えてしまったというわけだ。

 ディプロイメントの差は認識していたつもりでいたが、パワーサーキットでそれを明確に突きつけられ、「ICEの性能向上だけではいかんともしようがないと再認識させられた」という意味で、冒頭に述べたように新井総責任者は、「夏休み明けがターニングポイント」と語ったのだ。

 第15戦・ロシアGPのフリー走行でフェルナンド・アロンソのマシンに搭載してペナルティを消化し、続く第16戦・アメリカGPから実戦投入した『スペック4』は、残っていた4トークンをすべて使用した大がかりな開発が施され、うち1トークンによって排気管もコンパクトなナマコ型から、やや大柄なパワー重視の等長型に変更された。

 そこからのアメリカGP、メキシコGP、ブラジルGPではPU周りのセンサーや配線コネクター、そして最後はICE本体にまでトラブルが続出した。だが、これは新たに変更した部分が壊れたのではなく、従来から使ってきた部分が壊れたものだった。それはつまり、パワーが上がったことで負荷が高まり、これまで大丈夫だった箇所が壊れたことを示す。性能の向上が果たされた証(あかし)でもあり、2016年のPU開発に向けて重要なデータにもなったのだ。

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