【F1】どこが優位?開幕前テストから読み解く各チームの現状 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 もちろん、不安がないわけではない。メルセデスAMGのパワーユニットは昨年、3メーカー(メルセデス、ルノー、フェラーリ)の中で圧倒的な性能を見せたとはいえ、今季に向けて各メーカーとも大幅な開発を進めてきており、その差は間違いなく縮まる。それに対抗するためにさらなる開発を進めているが、ヘレスでは問題が散見されたようだ。

メルセデスはカスタマーチームに対してはコンサバティブなモードで走るよう指示し、パワーユニット関連のテストを一切させなかった。そのことからも、彼らが100%の自信で臨んでいるわけではないことがわかる。

 一方、昨年、最も非力でトラブルが多かったルノーは、パワーユニットに大きな開発を施し、根本的な解決を目指してきた。

 ルノーのカスタマーチームであるトロロッソは、ヘレスで十分な走り込みを見せ、昨年とは別次元の完成度であることを示した。しかし、ワークスチームであるレッドブルは4日間ともトラブルが相次いでガレージを閉ざしている時間が長く、満足のいくテストができたとはいえない。

 レッドブルはクラッシュテスト通過がヘレステスト開始の前日で、一時はテスト走行への参加が危ぶまれるほどに開発・製造がずれ込んでいた。だがそれは、それだけ攻めた設計をしているとも言える。

「例年どおり限界までプッシュしてきたし、初テストに向けて非常にタイトなスケジュールで進めてきた。しかし、それは我々にとっては当たり前のことだ。限界ギリギリでないのなら、それは努力していないということだからね」(クリスチャン・ホーナー代表)

 レッドブルは、長年チームの技術陣を率いてきた鬼才、エイドリアン・ニューウェイが一線を退くことを決め、チーフエンジニアリングディレクターのロブ・マーシャルを中心とした上級技術体制を構築。少しずつ権限の移譲を進めているという。圧倒的カリスマを頂点とした組織から、合議制の組織へと移行する彼らが、この先も革新的なマシン作りを続けられるのか。レッドブルが再び頂点に返り咲けるかどうかは、この点にかかっている。

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