【F1】ロシアGPでリタイアした小林可夢偉の本音 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「普通のピットストップやと思って入ったらエンジンを止めろって言われて、そのまま終わりということで。首脳陣からアクシデントを避けるためにクルマを止めろと言われたみたいです。でも、トラブルの予兆はまったくなかったし、単純にパーツのマイレージをセーブするために止めたということみたいです」

 クルマを降りた直後、可夢偉はそう語った。

「レース自体は順調でペースが良かったし、全然悪くなかったと思います。マーカス(・エリクソン)はオプションタイヤで僕がプライムやから、あのタイム差ならむしろ僕の方が実質的には速かったんですよ。今回はロングランでは僕の方が全然速かったんです」

 その後、チームはブレーキの過熱により安全を考慮してレースを取りやめたと発表した。これ以上走行を続ければサスペンションが破断する恐れがあったからなのか、それとも今後の数戦に向けてパーツの寿命を残しておきたいということだったのか、はたまた他のパーツを節約するためだったのか、事の真相は定かではない。チームの上級エンジニアからの提言を受け、最終的にはチーム代表のラベットが決断を下した。

 そのラベットに、スペアパーツ製造は進んでいるのかと問うと、彼はこう答えた。

「その質問は、このチームのパフォーマンスとコミットメントに対して不適切なものだと言わなければならないだろう。我々にはパーツ不足の事実はないし、鈴鹿で可夢偉が大きなクラッシュをした際にもマシンの修復ができたことを忘れないでほしい。パーツの製造はチームの技術部門と製造部門によって決められたもので、まったく問題はないよ」

 彼は、鈴鹿のクラッシュ後に最新パーツで修復ができなかったことには触れなかった。また、ロシアGPでマイレージ節約のためにレースをストップしたことを認めれば、パーツ不足を認めることになり、ひいてはチームの財政難を認めることになる。つまり、嘘を隠すために、また嘘で塗り固めなければならない状況に陥っているのだ。

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