【F1】オーナー交代。可夢偉のシートはどうなる? (4ページ目)
リプレイ映像を見返して、可夢偉はあらためて「よう避けたな!」と自分で感心していた。そのくらい、可夢偉は動物的な勘と瞬時の判断能力に優れているのだ。可夢偉の背後を走っていたフェリペ・マッサ(ウイリアムズ)は避けきれずにクラッシュしている。
しかし可夢偉のマシンも無傷では済まなかった。
飛散していたパーツでノーズやボディカウルがヒビ割れ、荒れた芝生の上を高速で走ったことでフロアにもダメージを負っていたようだ。本来出るはずのダウンフォース量が出ず、高速コーナーの連続するシルバーストンで戦えるような状態ではなかった。
「ひとりで『遅っそいな〜!』って思いながら走ってましたよ(苦笑)。遅いしひとりで走ってるし誰とも戦ってないし、僕にとっては一番面白くなかったレースでしたね」
レースがしたい。それが可夢偉の偽らざる気持ちだ。今季、ケータハムで苦しい戦いになることが分かっていながらもF1に舞い戻ることを決心したのは、なによりもF1という舞台でレースがしたかったからだ。
ひとまず、今週のドイツGPは可夢偉がレースドライバーとして変わらずレースに臨むことが決まっている。しかしそれ以降、可夢偉のシートがどうなるかはまだ誰にも分からない。
結果が残せるのなら、このチームに必要な人材だと言えるなら、走り続けることができる。そのためには、新たなオーナーが目指すランキング10位を獲得することが必要になるだろう。
「ここからは1戦ごとが勝負。シビれますね!」
2009年にトヨタでF1デビューのチャンスが与えられたとき、可夢偉は自分に後がないことを承知のうえで、思いっきり楽しんで戦い、結果を出し、その後のザウバー起用へとつなげた。
「いや、あの時以上にシビれるでしょ! あの時はちょっと頑張ればポイントが獲れて良いところに行けるかもっていうクルマやったけど、このクルマじゃどんだけ頑張ってもポイントなんて獲れないしね」
だが、新オーナーもそんなことは百も承知だ。だからこそマシンの改良を視野に入れている。そうしたプロセスの中で、可夢偉がチームリーダーとしてその責務を果たせるかどうかの勝負だ。
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