【F1】名門マクラーレンで陣頭指揮をとる日本人、今井弘の奮闘 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

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「我々のクルマはフロントのダウンフォースが足りていないので、いつもフロントの摩耗が楽ではないのですが、ここはさらにキツかった。もう少しダウンフォースが乗っかってくれれば楽になるんですが、今の小さな開発では全然足りない。もっと大きなものがないと厳しいですね......」

 レース現場での今井は、タイヤの扱いとマシンセットアップ、そしてレース戦略と幅広く任を負っている。

 決勝レース中は、ピットガレージ中央に据え付けられたデスクで、各ドライバー担当レースエンジニアらとともに席を並べて、前述のように走行中のマシンから常時送られて来るデータをチェック。各部門担当のデータエンジニアから報告を受けながらタイヤの状況を分析している。そのうえで、レース戦略の変更をリアルタイムで判断していくのだ。

 今井がチェックしているテレメトリーのデータは50項目にものぼり、それを元に今のタイヤで何周目くらいまで走れるかという分析を常に行なっているという。もちろん、それを2台のマシンについてほぼ同時に行なわなければならない。

「チーム内のインターコムではエンジニアが5人くらい同時に話すこともあるんですが、その中からひとつかふたつのチャンネルを選んで、ボリュームを上げて瞬時に対応する。よくそんなことができるなと思います。セッション中の今井さんは、とても近寄りがたい雰囲気ですよ」

 マクラーレンに無線システムを供給するケンウッドのエンジニアはそう語る。今井は自分のデスクに設置されたインターコム装置の通話ボタンを左右の手で忙しく操作し、他のエンジニアたちとやりとりをしている。「レース中はかなり緊迫していますね」と笑う今井の表情からは想像もできないが、戦いの最前線にいる今井の目は眼光鋭くモニターを見つめている。マクラーレンという名門チームにおいて、今井が極めて重要な存在となっていることは間違いない。

 それはレース現場だけでなく、ファクトリーにおいても同様だ。チーム組織図のなかで言えば、テクニカルディレクターとエンジニアリングディレクターという技術部門トップ2名のすぐ下で、彼らに直接報告をする立場にある。

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