【MotoGP】ブリヂストン撤退表明。トップライダーたちの反応は? (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 欧州の地の利を活かしたミシュランのこの戦略に対抗すべく、ブリヂストンは世界中のサーキットで徹底的にテストを重ねてタイヤ品質を向上させていった。

 タイムアタックを行なう予選では、一周だけ驚異的なグリップ力を発揮する予選用スペシャルタイヤが投入されていた時代だ。ミシュランとブリヂストンは、両社とも相手を打ち負かすべく湯水のように資金を投入し、〈タイヤ戦争〉は年々激化の一途をたどっていった。

 それでもミシュランの圧倒的な優勢は変わらなかったが、2007年になって状況に変化が生じた。ホンダサテライトチームからドゥカティへ移籍したケーシー・ストーナーがシーズン10勝を挙げ、ドゥカティとブリヂストン双方にとって記念すべき初タイトルを獲得した。

 ストーナーの後塵を拝し、圧倒的なパフォーマンスを目の当たりにしたバレンティーノ・ロッシ(フィアット・ヤマハ:当時)は、翌2008年からブリヂストンタイヤへスイッチ。これで時代の流れは決定的になった。この年の秋には、シーズン途中にもかかわらずダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)がミシュランからブリヂストンへ替えるという挙に出て物議を醸したが、むしろこれらすべては、大巨人ミシュランの落魄(らくはく)を印象づける方向に作用した。

 そして、「2009年からはタイヤをワンメーク化する」とレースを運営するDORNAが発表し、各タイヤメーカーからの入札を募ったが、ミシュランはこれへの参加を見合わせ、ブリヂストンが公式サプライヤーに決定。幾度かの複数年契約更改を経て、現在に至る。
 
 このような背景を経てきただけに、選手たちも一様に驚きの声を隠さない。

「個人的にはとても寂しく思うし、とても残念なニュースだ」と、ロッシは真剣な表情で話す。

「同じタイヤでどのようなバイクでも性能を発揮させることは、とても難しい。ブリヂストンのクオリティはとても高く、他のサプライヤーが同じ水準に達することができるとは思わない。タイヤが変わると、この競技はかなり大幅に変わってしまう。バイクづくりを大きく変えなければならないし、なにより選手はライディングスタイルを変更しなければならない。ブリヂストン以外のタイヤを使ったのは2007年が最後だけれども、他のタイヤ企業が彼らの達成した水準までつくりあげるのは難しいだろう」

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