【F1】小林可夢偉に小さな手応え。「やっとマトモに走り出した」 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 レース終盤、マクラーレンの1台(マグヌッセン)がリタイアしたことで、マルシアの1台(チルトン)が13位で完走。可夢偉がマレーシアで得た11位完走もむなしく、マルシアが再びコンストラクターズランキングでケータハムを上回る結果となった。
※コンストラクターズランキングは、10位以下の獲得ポイントがない場合は、完走順位によって決まり、同位の場合はその回数が多い方が上位となる。

 実は可夢偉とケータハムが、燃料でここまで攻めの姿勢になった背景には、1週間前の苦い経験があった。

「マレーシアGPでは、決勝後に燃料が残っていたんです。あと2周走れるくらい(約6kg)はあったから、相当な量ですよ。(重量増による)タイム差は1周で0.2秒くらい。とすれば、1レースのトータルで10秒でしょ? それはデカいでしょ?」

 だが、1周分の燃料を削って臨んだ戦いは、決して意味のないものではなかった。マルシアだけでなく、ザウバーとも十分戦えるという手応えをつかんだ。マルシアよりも後ろの15位完走という“結果”だけを見れば、それは取るに足らないものかもしれない。しかし、そこには間違いなく“意味”があった。

「はぁ~、疲れたぁ……」

 レース後に可夢偉のもとを訪ねると、彼は珍しく素の感情をさらけ出すようにため息を吐いた。目の前に好結果が見えていたがゆえに、落胆は決して小さくなかった。しかしそれにも増して、やれることはやり切ったという思いがあるからこそ、そして、このチームを引っ張っているという自信があるからこそ言えることがある。

「ザウバーとちゃんと戦えているっていうのは良いニュースやし、今回のデータを元にセットアップの煮詰めもして、次はアップデートのパーツも来るし、期待しましょう!」

 シーズン序盤のフライアウェイシリーズ最後のレースとなる中国GPには、待望の新パーツが投入される。バーレーンで得たこの手応えを、次はいかに結果へと結びつけるか。可夢偉とケータハムは着実に前へと進んでいる。

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