面白いが悩ましい。
F1中国GPで見えてきたピレリタイヤの特性 (2ページ目)
■2ストップを可能にしたマクラーレンの戦略
これを避ける戦略を採ったのが、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)とジェンソン・バトン(マクラーレン)だった。彼らは予選Q3に進出しても上位タイムを狙わず、性能の安定しているミディアムタイヤでスタートすることを選んだ。
ミディアムの寿命は18周ほど。最初のソフトタイヤが数周しか保たない上位勢は56周のレースを走り切るのに3回のタイヤ交換が必要になるが、マシンが軽くなってからソフトを履けばその寿命は長くなり、2回の交換だけで走り切ることができるかもしれない。
「2ストップが可能だったら驚くよ。それを成立させるためにはソフトタイヤで長いスティントを走らなければならない。そこが難しいところなんだ」
ベッテルはレース前にそう語っていたが、マクラーレンは2ストップ作戦に自信を持っていた。
「(タイヤ寿命的には)キツいけどがんばろうか、という感じでしたね。我々にとっては2ストップの方が速かったんです」(今井弘エンジニア/マクラーレン)
一方のベッテルは、上位勢と同じ3回ストップ作戦ながら、ソフトタイヤを最後に履く戦略。そうすればソフトタイヤの寿命が長くなり、1セットあたりのミディアムタイヤで走る周回数を減らすことができる。つまり、上位勢よりもタイヤへの心配が少ない状態で、全体的にハイペースで飛ばすことができるのだ。
ただし、懸案材料もある。前に誰かがいて本来の速さで走ることができなければ、この作戦は効果を発揮しないのだ。9番手スタートのベッテルは、その点がひっかかっていた。
「この戦略を成功させるのは難しいだろうと思っていたんだ。前がクリーンな状態で走ることが重要だったのに、第1スティントではそれができなかった。僕はニコ(・ヒュルケンベルグ/フォースインディア)よりも速かったけど、他のクルマについて走ると(気流が乱れる影響で)フロントタイヤを痛めすぎてしまうから抜けなかったんだ。その後の周回数のことを考えると、どのタイミングでピットインすべきか正しい妥協点を見つけるのは難しかったよ」
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