【F1】可夢偉、またしても不発。2位表彰台のチームメイトとの違いはどこにあったのか? (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 Q3に進んだ可夢偉は、予選で履いたタイヤでそのまま決勝に臨まなくてはならない。すでに4周走ったミディアムタイヤだ。

 一方、Q3に進出していないペレスはタイヤを自由に選ぶことができる。ここで彼は、一発逆転を狙ってギャンブルを選択した。8番グリッドスタートの可夢偉とは違い、失うものがないのだから当然だ。

「ある意味、Q3に行く速さがなかったことが僕らの助けになった。僕らはリスクを背負って、ハードタイヤでスタートする戦略を選んだんだ。それがうまくいったのさ」(ペレス)

 予選の一発アタックには優れるミディアムタイヤだが、決勝ではハードタイヤの方が保ちがいい。さらに、スタート直後の燃料が重い段階では、ミディアムよりもハードの方がタイヤの保ちは格段によくなる。より長く走れれば、残りの周回数を1セットのタイヤで走り切ることができる可能性も高くなる。

 その結果、可夢偉が最大限に粘ってスタートから20周目まで走ったのに対し、ペレスはハードタイヤで28周目まで引っ張った。残り周回数は、ハードタイヤを履く可夢偉が38周、ミディアムタイヤのペレスは30周。この差が、大きかった。

 ここからペレスは、周囲のライバルに比べて非常に速いペースで飛ばす。上位勢もみな、可夢偉と同じくハードタイヤで長距離を走らねばならないのだ。このタイヤの差は明らかだった。

「第1スティントをあれだけ引っ張って、同時にペースも維持するというのは簡単なことじゃなかった。でもそれをやり遂げたから、第2スティントで最大限アタックをすることができたんだ。おかげで大勢のドライバーといいバトルができたし、素晴らしいレースだった」(ペレス)

 ペレスはタイヤのタレたフェラーリ勢の2台までオーバーテイクし、2位でフィニッシュ。今季3度目の表彰台を獲得した。

 可夢偉は可夢偉で、与えられた中でやれるだけのことはやった。しかし徐々にタイヤの性能が低下し、ペースはどんどん落ちていく。自分の仕事は果たしたが、戦略の差はどうすることもできなかった。

「基本的にはそんなに悪い感じではなかったんですけど、予選のペースなり、前の集団なりの結果じゃないかなと思います。今回あれだけ速かったフェラーリとは予選ではひどい時には0.6秒以上あったのに、58周終わってみて20秒差くらいだったんで、(レースペースとしては)本当に悪くなかったと思う」

 今回のイタリアGPはカナダGP(ペレス3位、可夢偉9位)とまさしく同じ展開。レース後の可夢偉に悔しさはなく、どちらかといえば戸惑いの方が強かったのかもしれない。

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