【MotoGP】これぞ名勝負。ロッシがストーナーとのバトルを制して復活の2位 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu


 乳糖不耐症を得たことで家族の大切さを思い知り、薄れてゆくレースへの熱意等と秤(はかり)にかけて長年熟慮した結果、この決断に至ったのはレースに先だつ日曜夜から月曜未明にかけてのことだったという。

 一方のロッシにも、先々週の第3戦直後に英紙が今季末の引退を報道する騒ぎが勃発した。だが、こちらはどうやらMotoGP取材歴のない記者によるただの憶測記事で、報道直後にロッシをよく知る取材関係者がツイッター等で無責任な内容を次々と指摘。ロッシ自身も、自らのアカウントでこの記事内容に言及して一笑に付した。

 ロッシについて触れるなら、現在抱える最大のテーマは、ドゥカティ・デスモセディチの粗雑なマシン特性だ。開発が迷走を続けてホンダやヤマハと互角に勝負できる水準に至らず、成績も低空飛行が延々と続いた。この低迷に対し、ロッシの能力終焉を指摘する声も上がった。
 
 ただ、ドライ時ほどのマシンパワーを必要としないウェットコンディションでは「アグレッシブなエンジン特性が影を潜めるので、ある程度は走りやすくなる」とロッシは何度も話しており、今回のストーナーとのバトルは、マシンの問題さえなければ今もなおハイレベルな戦いができるライダーであることを証明した格好だ。

 さらに、ストーナーとロッシの背後には、長年の因縁が横たわっていることも、今回のバトルを演出する巧(たく)まざる材料になった。

 たとえば、2008年のUSGPでふたりが優勝を争った際には、ラグナセカサーキットの名物コーナー・コークスクリューで劇的なオーバーテイクも繰り広げられたが、バトルの最中にストーナーが転倒。この転倒を誘発したロッシの駆け引きはフェアさに欠けるとストーナーが発言、緊張感が高まった。

 さらに、昨年の第2戦スペインGPもウェットコンディションのレースだったが、オーバーテイクを仕掛けたロッシが転倒した際にストーナーを巻き込み、両者の確執はさらに大きくなった。

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