【F1】「らしさ」を発揮して5位。可夢偉がスペインGPで見せた「成長の証」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 その背景には、可夢偉らしい駆け引きの巧さ、勝負強さが遺憾なく発揮されていた。

「僕らはとにかくストレートがあり得ないくらい遅過ぎてどうしようもなかったんで、抜くならコーナーで抜くしかないと思って狙いました。コーナーの出口でできるだけくっついていって。あんまり全部のコーナーでついていくと相手がディフェンスしやすくなってしまうんで、バレないように(一気に仕掛けた)。曲がれるかどうか分からなかったんですけど、行ってみたら『お、曲がれるやん!』って感じで(笑)」

 予選でトラブルなく順当にアタックができ、フロントローからスタートしていれば、可夢偉は間違いなく表彰台に立っていただろう。集団の中でこのペースであったならば、上位で単独走行していればさらに速いペースでロータス勢を抑えることも可能だったはずだ。

「ペースは悪くなかったんで、予選さえちゃんと走れていれば表彰台に行けていたと思います。だからこそ、完璧な週末にならなかったというのは悔しいですね。トラフィック(渋滞)があるとタイヤも壊れるしペースを上げられないんですけど、単独で走ればペースは良かったはずですから」

 例年、ザウバーは予算の少なさゆえにマシン開発のペースが遅く、ヨーロッパラウンドに入った頃から上位勢との差を開けられるという展開になる。シーズン序盤こそ好走を見せた今季も、その不安が指摘されていたが、ここスペインGPに投入したアップデートもライバル以上に効果を発揮し、しっかりとポジションをキープしている。

「完璧じゃない週末で5位っていうのは、クルマもみんなも成長した証拠やと思います。でも今後は調子の良い時に完璧な1週間を過ごすっていうことができたら、表彰台も充分可能だと思うんで、しっかりミーティングも重ねて完璧な週末にできるようにしたいですね」

 今回のウイリアムズの優勝でもわかったとおり、この大混戦のシーズンの中では、コンマ1、2秒が大きな意味を持ってくる。すべてを完璧にまとめた者が、こうして大きく上位に飛躍することが可能になる。

 次はグランプリの華と称されるモナコ。その華やかさとは裏腹に、ドライバーの腕がものを言う至難のモンテカルロ市街地サーキットで、可夢偉の才能とザウバーのポテンシャルが最大限に発揮されることを願いたい。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る