逃げ馬劣勢の有馬記念 タイトルホルダーは有終の美を飾ることができるか

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo

"グランプリ"GI有馬記念(中山・芝2500m)が行なわれる中山コースは、小回りで直線が短いコースとして知られる。ゆえに、同舞台においては「逃げ・先行有利」が基本のセオリー。

 だが、レースを有馬記念だけに絞ってデータをひも解くと、とりわけ逃げ馬には、言われるほどのアドバンテージはうかがえない。過去10年で逃げきり勝ちを収めたのは、2017年のキタサンブラックただ一頭。過去20年まで範囲を広げても、他に2008年のダイワスカーレットの例があるのみ。いずれも、「名馬」「名牝」と称されるほどの馬だ。

 そのことから、舞台設定こそ「逃げ・先行有利」とされるが、そこで行なわれる有馬記念は、必ずしも逃げ馬に追い風が吹くレースではない、と言える。

 そして今年、有馬記念(12月24日)に注目の逃げ馬が出走する。GI菊花賞(阪神・芝3000m)、GI天皇賞・春(阪神・芝3200m)、GI宝塚記念(阪神・芝2200m)と、GI通算3勝を挙げ、今回の有馬記念が引退レースとなるタイトルホルダー(牡5歳)だ。

 タイトルホルダーは逃げ一辺倒の馬ではないが、この馬が最も強いレースを見せる時は「逃げた時」と言われる。その分、今回の有馬記念でもハナをきってレースの主導権を握ることが予想され、3歳時の菊花賞や昨年の天皇賞・春で見せた、後続を突き放しての圧倒的な逃げきりVを期待する声も少なくない。

 はたしてタイトルホルダーは、キタサンブラックやダイワスカーレットと同じく、有馬記念を見事に逃げきって「名馬」としてその名を刻むことができるだろうか。

有馬記念がラストランとなるタイトルホルダー。photo by Sankei Visual有馬記念がラストランとなるタイトルホルダー。photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る 関西の競馬専門紙記者はこう分析する。

「もともとここを引退レースと決めて、この秋の最大目標にしてきた点は好感が持てますし、前走のGIジャパンC(5着。11月26日/東京・芝2400m)のレースぶりを見ても、能力的な衰えは感じませんでした。

 加えて、今回は前走に比べて、メンバーがかなりラクになりました。勝てるか? と聞かれて『勝てる』とまでは言いきれませんが、勝つ可能性のある1頭、とは言えます」

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