日本馬が1頭いるかどうか→大挙して遠征 なぜ北米のブリーダーズカップに挑戦する馬が増えたのか (2ページ目)
【費用面は大幅に負担減】
費用面での後押しも大きな理由だ。
BCは主催者が輸送費などを負担するサウジやドバイ、香港などの招待競走と異なり、凱旋門賞などと同様に自費負担での渡航とされていた。しかし約10年前から、指定された日本国内のレースの勝ち馬に対しての輸送費の補助が始まり、現在ではすべての北米以外からの出走馬に最低4万ドル(約600万円)~10万ドル(約1500万円)の費用が輸送費の補助として支払われるようになった。
今回のように大挙しての遠征となれば、1頭当たりの輸送費負担はかなり軽減される。実質、前出の招待競走と同じような状況となったのだ。馬券発売の効果も含め、興行的にそれだけの投資に値するという主催者の判断だ。
そして2勝を挙げた2年前と、今年に共通する点として、アメリカ西海岸のカリフォルニア州での開催ということ。2年前のデルマーと今年のサンタアニタは、ともにロサンゼルスから馬運車でも1~3時間程度。何より、日本から経由がなく直行でロサンゼルスまで運べることは、馬への負担を考えるとかなり大きい。
これがケンタッキーやニューヨーク、フロリダでの開催となると、シカゴなどで経由が発生してしまうため、馬への負担が大きくなってしまう。来年も西海岸のデルマーでの開催が予定されており、今年と同じような布陣での遠征が期待できる。
さらに今後、西海岸以外での開催となった場合、日本から今年のような頭数かそれ以上の参戦であれば、主催者がチャーター機を手配する可能性があるとも聞く。それが事前から確実となれば、開催地を問わずに参戦する陣営も増える可能性は高い。
また、こうした輸送を下支えするのが、この20年余りの積極的な各地への遠征を通して得られたノウハウだ。日本陣営に帯同した獣医師のひとりに話を聞くと、「個々の馬の性格で、到着後に食欲が落ちる馬こそいるものの、いわゆる"輸送熱"は未然に防げるようになり、ほぼ起きなくなりました」と話す。出発前、輸送中の体調管理が大きく向上したことで、積極的な海外遠征を後押しすることになった。
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