高松宮記念で「絶対王者」の誕生なるか 混戦極めるスプリント戦線に断を下す有力候補3頭 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 だが、競馬サークル内の見方は、そこまで甘くはなかった。栗東のある厩舎関係者が言う。

「注目してほしいのは、昨年この馬が負けたふたつのレースです。3着だったGIII北九州記念(小倉・芝1200m)と、5着だったスプリンターズS。実はこの2戦とも、敗因がはっきりしています。

 北九州記念はうしろから行きすぎたこと。スプリンターズSは内有利の馬場で終始外を回ったこと。一見、それらは『やむを得ない』と思うかもしれませんが、グランアレグリアならば、そういった不利や誤算があったとしても、勝っていたはずです。

 要するに、この馬にはまだ、GIを勝つに相応しい力が備わっていない、ということ。競馬の結果が(すべてが)うまくいったかどうかで左右されるようでは、まだまだですよ」

 専門家から見れば、ナムラクレアもアグリ同様、今後のスプリント界を引っ張っていく存在としては、いまだ頼りなく見えるといったところか。

 では、残るピクシーナイトはどうか。

 一昨年のスプリンターズSの覇者である。それも、「メンバーには、レシステンシアやダノンスマッシュがいて、昨年のスプリントGI2戦とは比べものにならないぐらいレベルが高かった」(前出の専門紙記者)一戦を制している。まともなら、グランアレグリアのあとに「絶対王者」として君臨するのは、この馬だったかもしれない。

 ところが、好事魔多し。スプリンターズSの勝利後に挑んだ海外GIの香港スプリント(香港・芝1200m)で事故に巻き込まれ、一時は「再起不能」と言われるほどの重傷を負ってしまうのだ。

 その結果、「引退」という声も囁かれたが、その後の関係者の懸命な治療と努力の甲斐あって、この高松宮記念で約1年3カ月ぶりのカムバックにこぎつけた。先の専門紙記者が語る。

「レース中に負ったケガは、1年近く乗れないほどの重傷だったと聞いています。普通なら、再起なんて考えられないような故障です。

 それでもなぜ、オーナーや厩舎関係者が再起にこだわったのかと言えば、この馬のポテンシャルがそれだけ高いと見ていたからです。陣営の誰もが『もう一度、GIを走らせたい』『もっとGIを勝って、堂々と種馬にしたい』と思った。それぐらい同馬に惚れ込んでいたんです。

 事実、この馬にはスプリント界のトップに君臨するだけのポテンシャルがあります。アグリやナムラクレアは、その点で、一枚、二枚は落ちると思います」

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