高松宮記念で「絶対王者」の誕生なるか 混戦極めるスプリント戦線に断を下す有力候補3頭 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 その勢いは、今やとどまるところを知らない。現状からすれば、初めてのGI戦という大きな壁も簡単に突破してしまいそうだ。

 得意のスタイルは、競馬で最も取りこぼしが少ないとされる先行抜け出し。4連勝を飾ったレースはいずれも同様のスタイルで、阪急杯もその先行力を生かして、危なげなく勝ちきった。

 ただ、新興勢力にはつきものの課題もある。

 最大の課題は、過去9戦のキャリアのなかで、1200m戦を走ったことが1回しかないこと。加えて、自身最低着順の4着に敗れているため、余計に距離適性についての不安が募るが、実際はどうなのか。関西の競馬専門紙記者はこんな見解を示す。

「アグリには、無理せずにスッと先団につけるダッシュ力がありますからね。1200mという距離そのものには、心配はいらないと思います」

 しかし、同記者によれば、その他に気がかりな点があるという。

「何より、競走馬としての"引き出し"が少ないことでしょう。4連勝と言っても、ほとんどが先行抜け出しの競馬。それが、今度も実践できればいいですが、できなかった時にどうするのか。

 その時に、馬がどれだけの引き出しを持っているかが問われる。つまり、対応力です。ワンパターンの競馬しかしていない分、この点は大いに不安があります」

 次に、旧勢力ではあるものの、アグリと同じく明け4歳馬のナムラクレアはどうか。

 そもそもGI桜花賞(阪神・芝1600m)で3着になったほどの素質馬。距離短縮で挑んだ昨夏のGIII函館スプリントS(函館・芝1200m)では、並みいる古馬勢を一蹴し、スプリンターとしての頭角を現した。

 その後の2戦は善戦止まりに終わったものの、前走のシルクロードSでは改めてその能力の高さをアピール。勇躍、スプリント界の「女王候補」に名乗りを挙げた。

 特に同レースでは、逃げるマッドクール(3着)を捕らえにかかるなか、外から強襲するファストフォース(2着)にかわされそうになりながら、そこからグイッとひと伸びして勝利。味のある競馬を見せて、古馬になってからの成長ぶりをうかがわせた。

 スプリント重賞はすでに3勝。距離適性は高く、アグリの課題とされた"引き出し"も、前走の走りを見る限り、この馬の問題として指摘されることはないだろう。今後のスプリント界でグランアレグリアの跡を継ぐのは、同じ牝馬のこの馬か、という期待が膨らむ。

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