日本ダービーでジオグリフ以上にダノンベルーガに魅力を感じるわけ。「もはや古傷のことは気にしなくていい」 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 つまり、勝負どころでの進路が馬場の悪い内にしかなかったのである。あれでは、力を出しきれなかったとしてもやむを得ない。むしろ、そういった状態に陥りながら4着に食い込んだことを評価すべきだろう。

 もともとセレクトセールで1億6000万円(税別)という高値で取引された素質馬。そして実際、デビュー戦を圧勝し、2戦目のGIII共同通信杯(2月13日/東京・芝1800m)でも鮮やかな勝利を飾ってクラシック候補に名乗りを挙げた。

 最大の武器は、強烈な破壊力を秘める末脚。東京・芝2000mのデビュー戦では上がり33秒1という破格の時計をマークし、手綱をとった石橋脩騎手もレース後、「それにしても直線の脚はすごかった」と舌を巻いた。前出の専門紙記者も再び語る。

「デビュー戦の勝ちっぷりは、背筋がゾクッとしました。初陣の2歳馬が、古馬にもなかなか出せないような上がりタイムを打ち出して勝つんですから。この段階で、この馬の末脚は早くもGI級。やがてGI馬になる逸材だと確信しました」

 2戦目の共同通信杯ものちのGI馬、皐月賞を勝ったジオグリフとGINHKマイルCを制したダノンスコーピオンが出走。今にして思えば、かなりハイレベルの一戦だったが、ダノンベルーガはこれら難敵を一蹴している。

 この2戦のパフォーマンスで、ダノンベルーガのポテンシャルは世代最上位であることは証明されている。

 ただ、周囲の評価はそこまで高くはなかった。皐月賞も2番人気とはいえ、単勝オッズは5倍にとどまった。

 その一因はデビュー前、同馬が育成牧場で競走生命を危ぶまれるような大ケガ(右後肢)を負っていたからだ。さらに、それはいまだ完治しておらず、デビュー2戦で左回りの東京競馬場を使ったのも、そのケガをした右後肢に負担がかからないためと言われ、右回りの皐月賞出走に関してすぐにゴーサインが出なかったのも、この古傷を考慮してものとされた。

 そうした報道を受けて、ファンが懸念。絶対的な信頼を得られなかったのも頷ける。

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