ウマ娘でも快走の奇跡の名馬・トウカイテイオー。皇帝と帝王、父子の物語 (4ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 当時放送していたテレビのレース映像を見ると、アナウンサーは最初、戸惑うように「トウカイテイオーが来ている」と言っている。そしてその後、ビワハヤヒデを捉えにかかると「トウカイテイオーが来た、トウカイテイオーが来た!」と、まるで今起こっていることを確かめるかのように連呼。最後に「トウカイテイオー、奇跡の復活!」と絶叫した。それほど、この結果は信じられないことだった。前走から中364日でのGⅠ勝利は最長記録であり、いまだに破られていない。

 おそらく馬は、人間のようにレースの価値を理解していない。走りたくなければやめることもできる。それを誰も責められない。それなのにトウカイテイオーは、なぜ骨折を3度も繰り返しながら、ここまで頑張れるのか。無敗で父の背中を追っていた当時、こんなに何度も倒れながら、そのたびに立ち上がる姿を誰が想像しただろうか。

 希代のグッドルッキングホースと言われ、完璧だった父のキャリアを追いかけた若き頃。ダービーを境に、その夢からは遠のいたかもしれない。しかし、骨折と戦い続けた"帝王"がファンに遺した記憶は、父と同じかそれ以上に大きい。

 今年も日本ダービーがやってくる。この日までに、あるいはこの日を皮切りに、また1頭1頭のドラマが織り成されていく。トウカイテイオーの生涯は、そんな競馬のロマンを教えてくれる。

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