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三冠牝馬デアリングタクト、復活の可能性は? ヴィクトリアマイルでの走りを考える (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Sankei Visual

 だが、デアリングタクトは幸いなことに、陣営のスタッフによる懸命な治療とリハビリのサポートによって、戦列復帰までこぎつけた。

 レースからおよそ1カ月前の4月13日に帰厩。以降、順調に乗り込まれ、4月末からは実戦モードに突入し、栗東トレセンのCWコースで終(しま)い11秒台の好時計まで出している。

 この動きに対して「いい頃と比べると、動きはもうひとつ」と、同馬を管理する杉山晴紀調教師は辛口だったが、5月に入ると、ひと追いごとに素軽さを増していったデアリングタクト。その愛馬の動きには、「徐々にこの馬らしさを取り戻しつつある」と好感触を口にするようになっている。

 主戦の松山弘平騎手も、当初は「歩幅が小さくなっている」と不満げだったが、直近では「よくここまで(戻った)」と、デアリングタクトが復調急であることを証言している。

 ただ、その前途は必ずしも"視界良好"というわけではない。関西の競馬専門紙記者はこんな見解を示す。

「デアリングタクトのような一線級のオープン馬は、稽古をすれば時計は出るんです。ですから、いい時計だからといって、それを鵜呑みにすることはできません。大事なことは、動き自体が戻っているか、戦う体になっているか、です。

 特にポイントとなるのは、筋肉。1年もの休養明けですからね。一見、馬体はもとに戻っているように見えても、筋肉は稽古だけでは戻せませんから。実戦を経ることで少しずつ筋肉がついていって、戦う体になっていくんです。

 その視点で見ると、デアリングタクトはまだまだ、です。今回のヴィクトリアマイルでは、勝ち負けは厳しいでしょう」

 実は繋靭帯炎には、そこから立ち直ろうとする時にも厄介なことがある。それは、調教の強度をそう簡単には上げられないことだ。

 調教を無理に強くしようとすれば、それだけ患部に負担がかかり、再発の危険が増す。つまり、最初から目いっぱいには仕上げられない、ということ。その分、復帰初戦のヴィクトリアマイルでの好走は厳しい、という見立てになる。

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