天皇賞・春で思い出すメジロマックイーン。トウカイテイオーとの世紀の対決などその輝きを振り返る (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

メジロの至宝vs無敗の帝王

 この年の天皇賞・春は、競馬ファンの興奮が極地に達したレースだった。なぜなら、スターホース2頭の直接対決が実現したからである。

 その1頭は、長距離で無類の強さを誇るメジロマックイーン。そして、相対するもう1頭のスターホースが、トウカイテイオーだった。

 トウカイテイオーは、それまで7戦無敗。皐月賞と日本ダービーというGⅠを圧勝で制し、その後、骨折で長期休養するも、見事に復帰。ケガ明けの前哨戦を楽勝してここに挑んできたのである。

 メジロの至宝と、無敗の帝王の激突。人々はこの戦いを「世紀の対決」と呼んだ。

 そんな世紀の対決の軍配は、メジロマックイーンに上がった。長らくマックイーンとコンビを組んできた鞍上の武豊は、3コーナー手前からロングスパートを仕掛けて先頭へ。テイオーがその後ろを追いかけると、武豊は横目で何度もライバルを確認する。

 一体どちらが強いのか。胸が高鳴る瞬間だったが、直線に入るとテイオーの脚色は鈍った。この距離では譲れないとばかりに、メジロマックイーンが勝利。トウカイテイオーは5着に沈み、その後、再度の骨折も判明したのだった。

 マックイーンも、このレースを終えて、次のGⅠへ向かう途中に骨折を発症。長期休養に入る。復帰したのは約1年後の1993年4月。7歳になっていた。

 この年、同馬は前人未到の記録に挑む。それが「天皇賞・春の3連覇」だ。ケガ明けの復帰戦も快勝し、3連覇濃厚ムードになったが、それを阻んだ馬がいた。2歳下のライスシャワーである。

 ライスシャワーも、長距離にめっぽう強いステイヤー。レースではマックイーンの背後をマークし、芦毛の馬体が抜け出したところを交わしたのである。マックイーンの3連覇は夢に終わったが、名ステイヤー2頭によるすばらしいレースだった。

 この後、GⅠをもうひとつ勝利したものの、秋にはケガで引退となったメジロマックイーン。その後は、種牡馬として自身の血を伝える役目になった。

 それから約20年後、メジロマックイーンのスタミナを受け継いで活躍したのが、何を隠そうゴールドシップである。その血統を見ると、母の父にマックイーンがおり、毛色も同じ芦毛。この2頭の関係も、ウマ娘に反映されている。

 そのゴールドシップも、2015年の天皇賞・春を制覇。同馬の持つ無尽蔵のスタミナは、間違いなく母父譲りだろう。

 メジロマックイーンが駆け抜けた時代から、およそ30年の月日が経つ。その間に数多くの名馬が出てきたが、いまだに日本のステイヤー、天皇賞・春の名馬といえば、この馬に触れないわけにはいかないだろう。

 メジロが紡いだ血統の最高傑作。天皇賞・春の前には、マックイーンの強さが脳裏をよぎる。

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