「ウマ娘」でもヒールのライスシャワー。最後はファンに愛された名馬

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 快進撃を続けるスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」。実在の競走馬を擬人化した"ウマ娘"を育成し、競馬さながらに大レースを制するストーリーは、いまや競馬ファンのみならず、多くの人に愛されている。

 作中にはさまざまなウマ娘が登場するが、なかには大レースを勝つたびに自分が「ヒール(悪役)」となることに悩むキャラクターがいる。"ライスシャワー"である。

2度目の天皇賞・春を制し、ヒールからヒーローになったライスシャワー2度目の天皇賞・春を制し、ヒールからヒーローになったライスシャワー ウマ娘のライスシャワーは、大レースを制するたびに周囲が落胆する状況となり、「私が勝っても誰も喜ばない、ガッカリするだけ」と苦悩してしまう。勝つことを目指して生まれながら、なぜそんな悩みに向き合わなければならないのか。このキャラクター設定は、モデルとなった競走馬・ライスシャワーの苦悩がそのまま反映されている。

 ライスシャワーは、競馬史に残る大記録達成を2度にわたって阻んだ。そのため、勝利をおさめながら"ヒール"の位置づけになってしまったのである。

 最初に大記録を阻んだのは、1992年秋のGⅠ菊花賞(11月8日/京都・芝3000m)。3歳牡馬は、同世代で「三冠」と呼ばれるクラシックレース(皐月賞・日本ダービー・菊花賞)を戦う。3戦すべてに勝つと三冠馬となるが、当時はたった4頭(現在は8頭)しか成し遂げていなかった。

 この年、三冠馬に王手をかけたのがミホノブルボンだ。しかも、皐月賞、ダービーと無敗で勝ってきたのである。菊花賞を制して無敗の三冠馬となれば、1984年のシンボリルドルフ以来、史上2頭目の快挙だった。

 そんな歴史的な偉業を阻んだのがライスシャワーだった。ミホノブルボンが4コーナーで先頭に立ち、大歓声に湧いた京都競馬場。無敗の三冠馬誕生ムードがピークに達していたが、ライスシャワーの黒い影は虎視眈々とその背後に迫っていた。

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