ジャパンCで思い出すオグリキャップの雄姿。「美しい2着」にファンが感涙 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Sankei Visual

 この時の、両馬の息を飲むような、激しく、長い、長い叩き合いは、競馬史に残るひとつの伝説として、今なお語り継がれている。

 結果は、ハナ差でオグリキャップが勝利を飾った。レース後の勝利騎手インタビューでは、南井騎手が男泣きした。

 まさに激しく、熱い戦いの連続である。オグリキャップの消耗のほどが心配されたが、彼にはこのシーズンの大目標があった。世界の強豪と渡り合うジャパンC制覇である。

 天皇賞・秋の敗戦によって、図らずもマイルCSからの連闘で挑むことになったジャパンC。さすがにこの時ばかりは、オグリキャップにどれほどの余力が残っているかが懸念材料となり、このシーズンでずっと保持してきた1番人気の座を他馬に譲った。

 オグリキャップは、単勝5.3倍の2番人気だった。

 しかし、周囲の不安をよそに、オグリキャップはここでもまた、全身全霊を注いだ走りを見せる。がんばることが自らに課せられた宿命でもあるかのように、超ハイペースの4番手を追走。先に抜け出したニュージーランドの伏兵ホーリックスを猛追し、最後は激しい叩き合いを繰り広げ、内、外で並ぶようにしてゴール板を通過した。

 結果は、ホーリックスにクビ差及ばずの2着だった。それでも、走破タイムは当時の世界レコードとなる2分22秒2。疲れも見せぬオグリキャップの感動的な走りに、多くのファンが涙した。その際、2着は2着でも「美しい2着」と誰かが言ったことを、今でも覚えている。

 死力を尽くして戦ってきたオグリキャップが、異例のGI連闘、しかも世界トップレベルを相手にして、またも死力を尽くした。もはや、余力は残っていなかったのだろう。シーズン最後のGI有馬記念では5着に敗れた。

 とはいえ、この秋のオグリキャップは、最もオグリらしく輝いていた。

 まもなく、ジャパンCを迎える。今年は前代未聞のレースとして、早くから異常な盛り上がりを見せている。そんな折、歴史的なレースとして忘れ得ぬ、オグリキャップの"美しい2着"を、ふと思い出した。

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