宝塚記念で思い出すメジロライアン。戦法転換でついに無冠を返上した (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 しかし、メジロマックイーンという同じ牧場で育った"新星"の登場によって、またしても3着と苦杯をなめることに。

 おそらくこの頃から、メジロライアンの「大器」という評価について、ファンも少しずつ疑いを持ち始めたのではないだろうか。おかげで、「大器」というよりは、むしろ有り余る才能を持て余して、結果につなげられない「イマイチ馬」といった声まで聞かれるようになっていた。

 そうして、この菊花賞を最後に、メジロライアンがGIで1番人気に支持されることはなかった。

 菊花賞のあと、メジロライアンはGI有馬記念(中山・芝2500m)に駒を進める。

 馬主としての「メジロ」はもうなくなってしまったが、この頃の「メジロ」は日本競馬界屈指のオーナーブリーダーだった。その「メジロ」が、メジロライアンの"イマイチぶり"に、大きな危機感を抱いた。

 このままでは「未完の大器」とか「無冠の帝王」と呼ばれ、1.5流の馬で終わってしまう。なんとか有馬記念を勝たせたい。

 そんなオーナーの思いを、同じ「メジロ」のメジロマックイーン陣営は察したのだろう。今で言う"忖度"をして、メジロマックイーンは確実に勝ち負けできる有馬記念の出走を回避した。

 こうして、メジロライアンを勝たせるお膳立ては整った。

 だが、そこにまた、思わぬ強敵が登場する。

 オグリキャップである。

 前走のGIジャパンC(東京・芝2400m)では11着と惨敗。一世を風靡したかつての輝きを失って、「もう終わった」という声も囁かれていたオグリキャップだったが、引退レースとなったこの有馬記念で奇跡の復活劇を披露したのである。

 そう、今やすっかり伝説となったオグリキャップの「感動のラストラン」は、実のところ、周りが寄ってたかって「メジロライアンに何とかGIを勝たせよう」とお膳立てした舞台だったのだ。

 メジロライアンは、1番人気のホワイトストーン(3着)こそクビ差でかわしたものの、オグリキャップには4分の3馬身差及ばなかった。

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