牝馬優勢もあえて牡馬。アイビスSDは
格下レッドラウダが下克上する
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
夏の新潟開催がスタートします。
例年にないほどの異常な暑さに見舞われた福島開催は、最終週も波乱が続出。やはり、馬にとっても、人にとっても、大変な環境だったんだな、と痛感させられました。それに比べると、新潟はそこまで気温が上がることはなく、心地よい風も吹く競馬場ですから、人馬ともに福島開催よりは気分よく競馬に臨めるのではないでしょうか。
そんな新潟開催の開幕週に行なわれる重賞は、今年で18回目となるGIIIアイビスサマーダッシュ(以下、アイビスSD)。国内では唯一の直線・芝1000mが舞台の、いわゆる「千直」で行なわれる夏の新潟の"名物重賞"です。
現役時代、僕はカルストンライトオで2回、同レースを勝たせてもらいました。さらに、日本で初めて行なわれた千直のレースも勝たせてもらっているため、同舞台に対する思い入れはかなり強いです。
コース自体はシンプルですから、もしかすると単純なコースだと思っている方もいるかもしれませんが、実は意外と奥が深くて、スタートや道中の駆け引きなど、騎手の腕が問われるコースなんです。その分、僕も千直で騎乗するときは楽しかったことを覚えています。
やはりスタートは大事。ゲートの出と、そこからのダッシュ力は必須ですね。スタートがうまければ、それだけで普通のコース以上に大きなアドバンテージとなります。逆に出遅れは、それだけで致命的なものになってしまいます。
ですから、僕は千直のレースに騎乗するときは、ゲートの中で手綱を持つ位置を変えて"千直専用"のスタートをしていました。
また、1000mというと、中央競馬では一番短い距離のレースになりますが、だからといって、ひと息に走り切れる距離ではありません。しっかりと道中でタメを作ってあげないと、最後に止まってしまいます。
枠順は「外枠が有利」と言われていますが、内枠を引いた馬であってもダッシュ力があれば、序盤に外へ寄せていくことができますから、一概に「内枠不利」とは言い切れません。それに、反対にテンにいけない馬が外枠をひくと、内から外へと殺到してきた馬に包まれて進路がなくなってしまうことがありますからね。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。