大激戦の天皇賞・秋は「競馬を嫌がらなくなった」マカヒキに復活気配

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 秋華賞、菊花賞と3歳牝馬、牡馬の"三冠"レースが終わりました。そして今週は、秋の"古馬三冠"の第1弾となる天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)が行なわれます。

 最近の傾向では、この天皇賞・秋よりもジャパンカップ、有馬記念のほうが賞金が高いため、天皇賞・秋をパスしてそちらに臨む陣営が増えてきました。有馬記念の1着賞金も、昨年からジャパンカップと同じ3億円にアップ。天皇賞・秋の倍ですからね、そうしたローテションを選択する陣営が多くなるのは、やむを得ないのかもしれません。

 しかし今年は、昨年は当レースをスキップしたキタサンブラック(牡5歳)が参戦し、同期のライバルとなるサトノクラウン(牡5歳)、リアルスティール(牡5歳)も出走。さらに安田記念(6月4日/東京・芝1600m)を勝ったサトノアラジン(牡6歳)や、オークス馬のソウルスターリング(牝3歳)など、各世代のGI馬が顔をそろえました。加えて、GIタイトルこそないものの、GIでの好走実績や重賞勝ちのある実力馬たちも名を連ね、久しぶりに「メンバーのそろった秋の天皇賞」と言えるのではないでしょうか。その分、馬券予想は難しくなりますけどね......。

 まず注目されるのは、何と言ってもキタサンブラックでしょう。

 今年から大阪杯(阪神・芝2000m)がGIに昇格し、新たに春の"古馬三冠"レースが設定されました。そのうち、キタサンブラックは大阪杯(4月2日)、天皇賞・春(4月30日/京都・芝3200m)の二冠を完璧なレースで完勝。そのまま最後の宝塚記念(6月25日/阪神・芝2200m)も制して、「三冠濃厚か」と思われました。

 しかしハイレベルかつ熾烈な舞台において、短期間で3回とも高いパフォーマンスを発揮することは、並大抵のことではないのでしょう。特に、天皇賞・春はレコードタイムが記録されるような、極限に近い競馬でしたからね。そのあとの宝塚記念までは"おつり"が残っていなかったのだと思います。そこで9着と敗戦したことは、仕方がないと言えなくもありません。

 ただ......、それでも少し"負けすぎ"といった感は否めません。あそこまで負けたということは、その後の影響が心配されます。休養期間は、宝塚記念が終わった6月末から、トレセンに帰厩して乗り出しを開始した9月中旬までのおよそ2カ月半。この短い時間の中で、本当に疲れが癒えているのでしょうか。

 僕の個人的な感覚では、競走馬が疲れ果てた体を癒すには、最低でも3カ月の休養と、1カ月の調整期間が必要だと思っています。もちろん個体差があるので、それがキタサンブラックには当てはまらないかもしれませんが、あれだけ負けたあとなので、やはり気になります。

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プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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