オールカマーで思い出す、「中山マイスター」マツリダゴッホの秋祭り (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by AFLO

 この年、マツリダゴッホは不調のどん底にあった。休み明けのGII大阪杯(阪神・芝2000m)では、武豊騎手が騎乗して12頭立ての7着(2番人気)。続くGII札幌記念(札幌・芝2000m)は、横山典弘騎手が手綱を取って16頭立ての9着(2番人気)に沈んだ。人気を背負いながら、2戦続けて掲示板に乗ることさえできなかったのだ。

 迎えたオールカマー。

 調子は決していいとは言えなかった。年齢的な衰えも見えていた。ファンもそのことを敏感に察知していたのだろう。オールカマーでは過去2年、断然の1番人気が定位置だったが、初めて3番人気に甘んじた。

 レースは、鞍上の横山典騎手の"ひらめき"によってハナに立った。大外15番枠からの内へ切れ込んでの逃げは無謀とも思われた。

 だが、そんな心配をよそに、マツリダゴッホは快調に逃げる。競りかけてくる馬もいない。やがて、4コーナー手前――。

「中山マイスター」が、底力を発揮する。

 いつもの場所からスパートすると、あとは後続に影も踏ませることはなかった。終わってみれば、2着ドリームジャーニーに2馬身差をつける完勝だった。

 レース後の勝利騎手インタビューで、横山典騎手はこう言った。

「馬が(コースを)よく知っていますよ。勝負どころで、自分からスッと上がっていきましたからね」

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