僧侶が語る、『アストロ球団』とダービーと人生の巡りあわせ (4ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 そうこうしていると、05年に、思わぬ転機が巡って参ります。お大師さまが遣唐使船で中国に向かった途中、台風に見舞われて漂着した福建省の赤岸鎮という村に空海紀念堂というお堂があったのですが、そこに新たに日本人駐在員を派遣するということとなり、たまたま中国語を学習していた拙僧に白羽の矢が立ったのです。

 05年のある日、現地政府との交渉のために中国に出張することになりました。

 関西国際空港を出発するその日はたまたま、ディープインパクトが無敗の三冠馬となった、菊花賞の翌日でした。私は土曜と日曜とお休みをいただき、土曜日は当時関西テレビで放映されていた競馬番組「サタうま!」の公開収録を見学し、日曜日は京都競馬場で歴史的瞬間をこの目に焼き付けてまいりました。

 朝10時出発の翌日のフライトに備えて、その日は難波のカプセルホテルに宿泊。ああ、いい週末だったなあ、これで出張はうまくいくぞ、と思いながら眠りに就いたのです。

 さて、翌日、目が覚めると驚きの光景が。時計の針はまもなく9時になろうかという時間ではありませんか。血の気が一気に引きます。慌ててロッカーに行くと、先に集合している方々からの、嵐のような着信履歴を残しながら、それによってバッテリーが残り僅かとなった私の携帯電話がありました。

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