エリザベス女王杯、強い4歳勢の中でも惹かれるのは人気薄アスカビレン (2ページ目)

 牝馬は時として、一旦調子を崩すとなかなか戻らないことがよくあります。この春のタッチングスピーチからは、そんな雰囲気を感じました。それでも、ひと夏越して、一変している可能性はあります。もともと、秋から冬にかけて好成績を挙げている馬ですしね。

 デキが戻っていれば、間違いなくGI級の素材です。まして、牝馬限定戦であれば、地力上位です。そして、何より魅力なのは、鞍上がR・ムーア騎手であること。思い起こせば、ムーア騎手が日本で知名度を上げたのは、このエリザベス女王杯でした(スノーフェアリーに騎乗して、2010年、2011年と連覇)。勝つイメージは、十分にできていると思います。

 ミッキークイーンやタッチングスピーチをはじめ、今年は有力な4歳馬が計8頭も出走を予定しています。府中牝馬S(10月15日/東京・芝1800m)を勝ったクイーンズリング(牝4歳)に、重賞2勝のシングウィズジョイ(牝4歳)、まだ条件馬の身ながらGI3着の実績を持つマキシマムドパリ(牝4歳)など、その層はかなり厚いです。

エリザベス女王杯で一発の魅力があるアスカビレンエリザベス女王杯で一発の魅力があるアスカビレン そんな4歳馬の中で、ちょっと気になる馬がいます。あまり人気はしそうにない、アスカビレン(牝4歳)です。

 デビューから、それほど目立つ競馬はしていませんでしたが、3走前の1000万下条件・三木特別(6月4日/阪神・芝1800m)でバイガエシ(牡4歳)を完封。そのレースを見たときに、「この馬は、ひと皮むけたな」と思いました。

 バイガエシは、のちに重賞の函館記念で1番人気に推されたほどの馬。この夏は精彩を欠いていましたが、三木特別の時点では休み明けを快勝したあとで、上り調子のときでした。その分、相手としてはかなり手強かったと思います。

 その難敵を見事に一蹴したアスカビレン。仕掛けのタイミング、展開、そしてハンデ差などがあったとしても、ここで十分に本格化を感じました。実際、次走の昇級戦、1600万下条件・博多S(8月14日/小倉・芝2000m)でも、期待どおりの快勝。あっさりオープン入りを果たしました。

 久しぶりの重賞挑戦となった前走、府中牝馬Sでも4着と健闘。そのレースぶりから、鞍上・松田大作騎手の自信もうかがえました。

 レースでは、終始1番人気のスマートレイヤーをマークし、同馬の直後を追走。これは、まさしく"勝ち負け"を意識しているからこその行動です。そうでなければ、立場的には"漁夫の利"を狙いにいくでしょう。結果的には前有利の展開になってしまい、ゴール前での急追も及びませんでしたが、牝馬限定戦であれば戦える手応えを、鞍上の松田騎手はつかんだと思います。

 1回の騎乗ミスで、すぐに乗り替わりがあるのが、今のご時世。仕掛けが遅れた前走の競馬からすれば、松田騎手自身、本番での"クビ"も覚悟したのではないでしょうか。しかし今一度、チャンスをもらうことができました。

 その恩に応えるべく、今回は渾身の騎乗が見られるはずです。そんな期待を込めて、エリザベス女王杯の「ヒモ穴馬」には、アスカビレンを指名したいと思います。

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プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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