本命ビッグアーサーに不安?
スプリンターズSはネロの激走あるぞ (2ページ目)
これは、馬が行ってしまったのか、騎手が促して行ったのか、実際のところはわかりませんが、どちらにしても馬を"行く気"にさせたことは確かです。おそらく、そこでの主張が終いで後続に詰め寄られた要因でしょう。逆に言えば、それがなければ、ゴール前も脚が鈍ることなく、もっと差をつけて勝っていたでしょうね。
そして今回も、1枠1番。この枠順だと、前走の競馬が"仇(あだ)"となる心配が出てきましたね。抑えが利くか否か、これが勝負の分かれ目。福永騎手がどう乗ってくるのか、注目です。
このビッグアーサーのライバルとなる存在としては、シュウジ(牡3歳)、ソルヴェイグ(牝3歳)、ブランボヌール(牝3歳)ら、まずは3歳勢が気になるところです。それぞれ、函館スプリントS(6月19日/函館・芝1200m)、キーンランドC(8月28日/札幌・芝1200m)といった北海道の重賞レースで好走し、古馬を圧倒してきました(※)。
※函館スプリントS=ソルヴェイグが1着、シュウジが2着。キーンランドC=ブランボヌールが1着、シュウジが2着、ソルヴェイグが4着。
ただ、両レースの勝ち馬となった牝馬は、斤量50kg、51kgという軽量で出走。他馬との比較以前にその恩恵が、比較的小柄な牝馬にとっては大きかったと思います。
本番となる今回は、斤量53kgに増えます。それでも軽い斤量ですが、古馬との斤量差は縮まるため、過信は禁物でしょう。
この牝馬2頭に比べれば、両レースで2着だったシュウジのほうに可能性を感じます。同馬も斤量は増えますが、栗東トレセンの坂路で調教できることが、それ以上にプラスに働くと思うからです。
そうは言っても、GIの舞台で、しかもバリバリの古馬一戦級相手には、まだ3頭とも力が及ばないような気がします。ならば、休み明けでも実績のあるミッキーアイル(牡5歳)のほうが、ビッグアーサーにとっては強敵になるでしょうね。どうやら、あえて高松宮記念(2着)からのぶっつけで挑んできているようですし、陣営の本気度が感じられます。
上昇著しいネロへの期待が膨らむ ところで、今回の「ヒモ穴馬」ですが、前走のセントウルSの際にも推奨した、ネロ(牡5歳)を取り上げたいと思います。
前走時にも触れましたが(※9月10日配信。「セントウルSで穴をあけるのは、『千直』経験で競馬を覚えたネロ」)、ネロは千直の競馬で経験を積むことによって、それまで一本調子だった走りから、徐々にタメが作れるようになりました。前走に至っては、今までにない、差しの競馬で結果(2着)を出してくれました。
こうなってくると、距離の融通うんぬんではなく、馬自身のポテンシャルがさらに上がっていると思います。前走は思いのほか人気(2番人気)になってびっくりしましたが、今回はさすがにそこまで人気にはならないでしょう。どんな走りを見せてくれるのか、楽しみな1頭です。
著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。
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